大相撲の八百長問題で特別調査委員会が14日に、調査が6カ月に及ぶ可能性を示唆したことで、ベテラン力士らに一気に不安が広がった。15日、東京・両国国技館で日本相撲協会員による毎年恒例の献血が行われ、130人が協力した。調査の長期化で本場所の見通しが立たない状況に、30代の力士から体力とモチベーションの低下を危惧する声が続出。一部の力士は、引退する力士が増える可能性まで指摘した。

 相撲協会から奨励されている社会貢献活動の献血に協力しても、ベテラン勢の足取りは軒並み重かった。ある30代の力士は「いつ体力の衰えが来るか分からないので怖い。無駄に年を取ってしまう」と、率直に不安を口にした。38歳の序二段峰桜は「本場所は稽古場とは違う、独特の緊張感がある。技量を試す場がないのは…」と、うつむいた。別の30代力士は「場所の中止が続けば目標を見失う。そうなると引退する力士は増えると思うし、ファンの信頼をさらに失うと思う」と、負の連鎖を予想した。

 前日に調査委は、携帯電話のメール解析に半年を要する可能性があると指摘した。相撲協会は八百長問題の全容解明までは、本場所を開催できないとしている。すでに3月の春場所(大阪)の中止は決定。さらに5月の夏場所(東京)や7月の名古屋場所まで、中止の可能性が高まった。

 ベテランでも関取であれば、中止の間の給与は出続けるが、幕下以下には1場所15万円までの手当しかない。関取を目指してラストチャンスにかけたくても、問題が長期化するほど体力は衰え、必然的に出世の可能性は低下してしまう。

 相撲協会は1月に、力士の引退後の再就職を支援する相談会を初めて実施。それでも30歳の栃翼は「これで飯を食っていくと思って入った世界。趣味で相撲を取っているわけではない」と関取を目指し続ける。初場所は東幕下13枚目で5勝2敗。167センチの小兵ながら、来場所は新十両を狙える番付が予想されていた。

 栃翼は「期待していた親に、逆に心配をかけてしまった」と、年を取るほど就職などが困難になるため、周囲を巻き込んだことにもショックの様子だった。第2の人生への決断に迫られるベテランの姿は、若い力士にも当然影響する。八百長問題は、新たな問題へと波及し始めた。【高田文太】