八百長問題が若者の相撲離れを加速させた!?

 日本相撲協会は3日、新弟子検査の受検申し込みを締め切り、年間で最も希望者が多い春場所前のこの時期の受検者としては、現在の受検資格が定着した1973年(昭48)以降で最少の36人にとどまった。昨年から16人も減少し、元若麒麟の大麻事件があった09年の41人を下回るワースト記録。体の小さい希望者を対象にした2月15日の第2検査で体力検査を通過した6人以外の、173センチ、75キロ以上の規定がある第1検査の希望者も最少の30人にとどまった。

 新弟子検査の受検者数はついに「若貴ブーム」だった最盛期の4分の1以下にまで落ち込んだ。92年には160人を記録していたが、この日締め切った受検者は、第1、第2を合わせて36人。元若麒麟の大麻事件などの影響で最少だった09年の41人から、昨年は52人と回復の兆しを見せていただけに、放駒理事長(元大関魁傑)は「寂しさはあるか」の問いに「それはあるね」とつぶやいた。原因については「(八百長問題の影響は)あるかもしれない。少子化ということで相撲界を選ぶ子が少なくなったのかもしれないけど」と話すにとどめた。

 春場所前の新弟子検査は卒業シーズンと重なり「就職場所」と呼ばれる。年間受検者の大半を占める。今年は八百長問題によるイメージ低下と、春場所そのものがなく、デビュー場所も未定という現状が影響したようだ。1年前は5人の受検者がいた鳴戸部屋は今回はゼロ。鳴戸親方(元横綱隆の里)は「2、3人にアプローチしていたが…。昨年からのいろいろな騒動がスカウトに影響している」と冷静に分析した。

 昨年春場所は7人が受検した佐渡ケ嶽部屋は2人になった。佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)は八百長問題の直接的な影響を否定するが「何人かに断られたのは事実」と明かした。部屋別では3人が受検する貴乃花、八角の両部屋が最多。2人の受検者を送り出す玉ノ井親方(元大関栃東)は「こういう状況で親御さんは心配している。『来る』と言ってくれた本人たちのためにも、早く場所を再開させたい」と力説した。

 関係者によると3年前の学生横綱で、北の湖部屋入門が内定した佐久間貴之(日大4年)は春場所が中止になったことで受検を延期したという。ある有力高校相撲部の監督は「今回は受検者ゼロでもおかしくない状況。本場所がないのに新弟子を入れる相撲協会の姿勢には疑問を感じる」と話した。救世主となる金の卵候補は確実に減ってきた。