<大相撲名古屋場所>◇3日目◇12日◇愛知県体育館

 千代の富士の通算最多1045勝に王手をかけている大関魁皇(38=友綱)が、休場の危機に直面した。関脇鶴竜(25)に押し倒されて惨敗した。00年の大関昇進後、初日からの3連敗は、07年秋場所以来5度目。これまではすべて休場に追い込まれており、劇的に復調しなければ、通算最多勝利記録は秋場所に持ち越される可能性も出てきた。

 3日目も、魁皇は体を思うように動かせなかった。1回目の立ち合いは合わず、行司が止めて仕切り直し。2度目は上体を起こされ、鶴竜の左、右2発の突き押しで、腰から崩れ落ちた。土俵際で踏ん張る力も、残っていなかった。3連敗。あと1勝で通算最多勝利に並ぶはずの場所が一転、苦しい状況に陥った。

 「1回待ったして、相手に合わせて立ってしまい、そのまま倒されてしまった」。風呂から上がった支度部屋では、いつものように淡々とつぶやいた。「場所前の調子からいったら、仕方ないところもある。思い切って頑張らないと…」。休場の可能性については「今んところは考えてないね」と答えた。

 大関昇進後、初日から3連敗した場所は過去4度とも休場。平幕、小結の時は復調した実績もあるが、10年以上前にさかのぼる。今の体調を考慮すれば、通算最多勝の新記録樹立は、簡単ではない。宿舎での話し合いについて、友綱親方(元関脇魁輝)は「分からん。向こうからは言ってこんだろう」とした。

 神経痛による、足のしびれが、動きを狂わせる。2日目に続き、この日の夜も片道2時間以上もかかる奈良県の信頼する治療院へ出かけ、マッサージを受けた。この日の朝は、平幕魁聖との三番稽古で10勝2敗。名古屋入り後、稽古場では初めて関取と相撲を取り、感覚を取り戻すはずだった。弟弟子は「強いっすね」と驚いたが、結果にはつながらなかった。

 朝稽古後、地元の支援者が20万円以上のポケットマネーをはたいて、稽古場に大型冷風機を搬入した。少しでも魁皇のためになるならばと、周囲は後押しを惜しまない。魁皇は言う。「しびれは、場所中は取れない。それも仕方ない。できることをやるだけ」。体は満身創痍(そうい)だが、期待に応えたい気持ちが残っている。【佐々木一郎】