<大相撲名古屋場所>◇6日目◇15日◇愛知県体育館

 角界きっての人気者で、東前頭14枚目の高見盛(35=東関)が、十両転落の危機に直面した。豊響(26)に一方的に押し出され、2日目からの連敗は「5」に伸びた。02年春場所から連続56場所目の幕内に、来場所も残留するには、今場所で6勝は必要。残り9日で最低でも5勝と、白星先行させる必要がある。客足が伸びない今場所の盛り上げも期待されるベテランが、ピンチに追い込まれた。

 白星欲しさからか、高見盛は自販機で購入した白いカルピスウオーターをイッキ飲みした。囲まれた報道陣に「弱いからしょうがない。弱いんですよ…」と、つぶやいた。テレビCMで見た満面の笑みはない。不調でも周囲を笑わせる、いつもの自虐的なギャグもない。目はうつろ、不安げに右手でカベを触り続けていた。初日に勝って以降、5連敗。9年以上守り続けた幕内からの陥落危機に、かつてないほど落ち込んだ。

 この日の取組は、圧力のある豊響の突き、押しに防戦一方。あっけなく土俵を割った。師匠の東関親方(元前頭潮丸)は「昔はあそこからでも残ることができたけど、力が落ちている。気持ちの問題もある」と評した。三役も務めた20代と比べて体力の衰えは、本人も周囲も認める。だからこそ、気力と経験を生かしてほしいと期待する。だが高見盛は「精神的にもここまでくると…」と、めいっている様子だ。

 懸賞をかけ続けている永谷園の広報室では、テレビで連日全9人が応援している。八百長問題の影響で、1場所約200本(1本6万円)かけていた同社は今場所ここまで、高見盛に1日1本かけているだけ。奮起を促すために本数を増やす可能性もある一方、十両陥落の場合、広報担当者は「懸賞をかけ続けるかどうかは未定です」と、撤退の可能性も否定しなかった。

 前日5日目に、大関魁皇が単独史上1位の1046勝を挙げ、序盤戦を盛り上げた。人気者の高見盛が中盤戦から巻き返せば、残留と場所の盛り上がりの一石二鳥。「1つ勝てば。それを目指して頑張る」。5連敗以上は、この1年以内でも3度目。何度もピンチを迎えた35歳のベテランは、過去最大の危機も乗り越える決意だ。【高田文太】