<大相撲名古屋場所>◇7日目◇16日◇愛知県体育館

 大関とりに挑戦中の関脇琴奨菊(27=佐渡ケ嶽)が、西前頭筆頭の嘉風(29)を寄り切りで下した。初日に黒星発進も、2日目から6連勝。昇進の目安となる12勝へ、また1歩前進した。得意のがぶり寄りが相撲ファンに知られるようになったが、ニックネームの定着は、まだこれから。大関昇進が決まれば、知名度アップとともに代名詞も浸透するかもしれない。

 支度部屋を出る時、「ツッパリ大関」で知られた元千代大海の佐ノ山親方から、声を掛けられた。「キク、大関だな」。思わず琴奨菊も顔をほころばせた。7日目を終えて6勝1敗。順調に前半戦をしのぎ、中日以降に大きな可能性を残した。

 この日は、動きの速い嘉風をつかまえて、腰を下ろしての寄り切り。「うるさい相手なんで、立ち合いで迷ったけど、自分に勝てた。つかまえたら、何とかなると思った。しっかり最後、腰が下りたし、流れはいいですね」。左四つの自分の型で納得の白星をつかんだ。

 今場所前、元関脇琴錦の秀ノ山親方が「F1相撲」の異名を取ったという話題に及んだ時、琴奨菊は言った。「僕も、そういう代名詞が欲しいですね。舞の海さんは『石臼』って言ってたからなあ」。

 今年の初場所初日、NHKのテレビ中継でのこと。解説の「技のデパート」こと舞の海さんが、琴奨菊の重心の低さをたたえて「石臼」と評した。すると、「金メダルアナウンサー」こと刈屋アナが「柳川の石臼ですね」と、出身地になぞらえた。新ニックネーム誕生かと思ったが、定着には至らなかった。

 「ウルフ」の千代の富士、「技のデパートモンゴル支店」の旭鷲山、「お兄ちゃん」の3代目若乃花、「ロボコップ」の高見盛…。その時代ごとに、個性と実力を備えた力士は、自然とニックネームがついた。琴奨菊も大関昇進となれば、知名度もアップし、何かが定着する可能性がある。

 今日の中日は「怪力」魁皇が相手。「とりあえず余韻に浸って、明日は明日で考える」。相撲のイメージは低く、重く、がぶり寄りで、笑顔がトレードマークの九州男児。協会の看板と言われる大関へ、もう一息だ。【佐々木一郎】