<大相撲名古屋場所>◇9日目◇18日◇愛知県体育館

 大関とりに挑戦している関脇琴奨菊(27=佐渡ケ嶽)が、大関日馬富士(27)に寄り切られ、2敗目を喫した。土俵上でにらみ合うなど冷静さを欠き、自分を見失った。大関昇進の目安となる12勝に到達するには、残り6日間で5勝1敗が必要になった。

 熱くなりすぎた。仕切っている間、琴奨菊は珍しく、土俵上で日馬富士とにらみ合った。だが、立ち合うとすぐにもろ差しを許し、寄り切られた。「あーくそっ。もっと冷静にいかな…。強く当たろうとすると、脇があいちゃう」。強く当たろうと気持ちを高ぶらせすぎて、懐に入られてしまった。

 過去の対戦成績は、22勝10敗。苦手意識はないが、ライバル心が膨らんでしまった。「先に大関に上がられたんで…。メンタル弱いなあ」。会場で見守った父・菊次一典さん(55)も「体が硬直していた。そんなに気持ちを入れんでいいのにな…」と心配しつつ、帰路に就いた。千秋楽には、福岡・柳川から12人の応援が来る。望みをつなぐためにも、2敗以上はできない状況になった。

 般若心経を写経するなど、課題を自認する精神面の安定のために、「自分に勝つ」ことをテーマに掲げてきた。しかし、ここぞの場面で心が乱れた。「自分は重いんだからなあ。自分に言い聞かせないといけない」。大関昇進へは、残り6日間で1敗まで。この敗戦を糧にできるか。験直しのため、10日目から着用する浴衣を変える。大関にふさわしい力士かどうか、これから心が試される。【佐々木一郎】