<大相撲名古屋場所>◇10日目◇19日◇愛知県体育館

 横綱白鵬(26=宮城野)が、大関魁皇の引退に「まさかだよね」とショックを受けた。打ち出し後に名古屋市緑区内の宿舎で心境を語った。同じ立浪一門の先輩に惜しみなく賛辞を贈り「本当にお疲れさまです」とねぎらった。取組では関脇稀勢の里(25)を下し、歴代2位の27場所連続2ケタ白星を、無傷の10連勝で飾った。

 魁皇の引退を聞いた白鵬は寂しげな顔で、つぶやくように語り始めた。

 白鵬

 まさかだよね。大関の地位で一門を引っ張っていた。自分が関取になって稽古をつけてもらい、胸を出してもらった。あこがれの力士の1人でもあった。非常に人間味があった。同じ一門としてアドバイスをもらったり、温かい言葉も頂いた。大関の中ではいちばん横綱に近い大関だった。本当にお疲れさまです。

 5月の技量審査場所の千秋楽が、結果的に最後の対戦になった。魁皇に必殺の右上手を引かれ、敗れた。それでも大関の衰えを肌で感じた。「体がもうボロボロでね。気力だけで土俵に上がっていたのでは」。

 思い出は尽きないが、中でも2度目の対戦での初勝利が印象深いという。白鵬が前頭筆頭だった04年九州場所。もちろん大関だった魁皇を寄り倒した。「先輩に勝つことが恩返しになるからね」と当時を振り返った。

 この日の結びでは、今年初場所まで2連敗した稀勢の里を左上手投げで寄せつけず。8連覇にまた1歩前進した。偉大な先輩が去ることになる土俵で、同じ一門の代表として、角界の顔として、強さを見せつけた。「まだまだ指導されるでしょうし、これからも温かく見守ってほしい。託された分を、一生懸命、精進したい」。ますます重くのしかかる1人横綱としての重圧を、受け止めるように話した。【大池和幸】