<大相撲名古屋場所>◇14日目◇23日◇愛知県体育館

 大関日馬富士(27=伊勢ケ浜)が初日からの連勝を14に伸ばし、12場所ぶり2度目の優勝を決めた。1敗で追走する横綱白鵬(26=宮城野)との直接対決。1分を超える大相撲の末に寄り切り、白鵬の史上最多8連覇を阻んだ。

 前人未到の8連覇は、白鵬にとって今場所最長となる、1分4秒8にも及ぶ熱戦の末に消滅した。終始、日馬富士に下から組みつかれる苦しい体勢。強引に下手投げを打つと、その隙に乗じた相手に寄り切られた。元横綱朝青龍と並ぶ、史上1位の連覇は「7」で止まった。「思ったよりも自分の呼吸で立てなかった。右、左どちらでも、まわしをつかんでやろうと思っていた。これが今の自分の力」と唇をかんだ。史上6人目となる、大台20度目の優勝も、お預けとなった。

 場所前から何度も「名古屋の皆さんに、2年ぶりに賜杯を抱く姿を見せたい」と言ってきた。昨年の名古屋場所は優勝したものの、外部表彰をすべて辞退したため、賜杯を受け取れずに表彰式で涙を流した。今年は表彰式に出ることすらできず「これをバネにして、さらに精進したい。悔いはない」と、平静を装った。

 1人横綱となった昨年春場所から、全場所で優勝してきた。だが最近は「若くないから」が口癖だった。今場所5日目の朝稽古後に「年齢にはどんなに強い男も勝てない。いずれそういう時(引退)が来る。衰えを感じることが大事」と、漏らしたこともあった。場所前の稽古中に、生まれて初めて立ちくらみの症状を起こした。人知れず、肩の張りを感じていた。だからこそ先場所前は4度の出稽古を、今場所前は2度へと半減。わずかに感じ始めた衰えは弱気を誘い、重圧があったか問われると「人間だから」と素直に認めた。

 それでも負けん気までは衰えていない。8連覇の再挑戦には「一生懸命やっていれば、いずれ来るのでは」と力説。来場所の雪辱を誓っていた。【高田文太】