<大相撲秋場所>◇3日目◇13日◇東京・両国国技館

 大関とりを狙う関脇琴奨菊(27=佐渡ケ嶽)が、西小結阿覧(27)を寄り切りで下し、3連勝を果たした。日本人大関が不在の現状に、オリンピックおじさんこと山田直稔さん(85)は千秋楽まで、琴奨菊のために国技館内を盛り上げる全面応援を決意。土俵内外でのムードが、徐々に高まってきた。大関昇進を狙う鶴竜(26)は連敗し、横綱白鵬(26)は3連勝とした。

 必殺の形が出た。立ち合いから左四つになった琴奨菊は、腰を入れてガブリ寄り。「怖がらずに、相手をよく見ていったのが良かった。気分いいです」。同じく大関を狙う鶴竜が連敗、綱とりの日馬富士は2日目に負けたが、着実に勝ち星を積み重ねた。勝ち名乗りを受けると、向正面を中心に大きな拍手が起きた。

 頼もしい味方もついた。好角家で知られる五輪おじさんの山田さんが、テレビに映る向正面の升席で応援の音頭を取った。「琴奨菊」とでっかく印字された紙を20枚持参し、周囲に配って、声援を呼び掛けた。大相撲中継の画面は、背景が「琴奨菊」で埋められた。

 山田さんは、しゃがれ声でまくしたてる。「魁皇が引退したでしょ。だから琴奨菊に日本人の大関になってもらいたいんだよ。毎日来て応援する。今日も盛り上がった。ムード作りはうまいんだよ」。東京五輪から、08年北京まで、夏季五輪12大会連続で現地入りした“応援団長”が、後方支援を約束した。

 大関とりにムードは欠かせない。7月の名古屋場所11日目の白鵬戦。琴奨菊への声援が大きく、横綱は「勝ってはいけない雰囲気になった」と漏らした。千秋楽には地元の福岡・柳川市から大応援団が来場する。そこで最高潮を迎えるため、必死の努力が続けられる。

 「心の安定」をテーマに、琴奨菊も精進してきた。イチローの関連本を読み「人の評価より、自分の評価」と肝に銘じた。サッカー日本代表・長谷部主将の著書「心を整える」も購入。今は、元大関魁皇の「怪力」を読む。大関への道を切り開くノルマの目安は、12勝。「毎日1番、相撲を取ると思っています。いい感じです」。しびれる日々は、会場と一体となって乗り越えていく。【佐々木一郎】