<大相撲秋場所>◇14日◇東京・両国国技館

 大関日馬富士(27=伊勢ケ浜)が痛すぎる2敗目を喫し、今場所での横綱昇進が絶望的となった。東前頭筆頭の豊真将(30=錣山)に押し倒されて完敗。昇進条件の2場所連続優勝か、それに準ずる成績が、わずか4日目でかなり厳しくなった。

 立ち合う直前、日馬富士の頭の中が真っ白になった。仕切り線からじりじり遠ざかる豊真将の幻惑作戦に迷いが生じた。「あれ、あれ?

 と思った。初めての経験だからどうしたらいいか分からなかった。集中力が飛んでしまった」。

 頭から当たったが、右からおっつけられて幕内2番目に軽い128キロの体はズルズル後退。相手の左腕をつかんで抵抗するも、前のめりに倒れた。土俵下に座って首を振ると、唇をかんでタオルで顔を覆った。

 「何をしたか全然分からない。ただ当たっただけ。完璧に負けた。初めてなんで、いい勉強になった」。どんな動きにも対応するのが横綱相撲。小細工に惑わされては、まだその域に達しているとは言い難い。

 豊真将の手口は、大関把瑠都らに時折見せるもの。ただ日馬富士は「知らなかった。自分の相撲だけ考えるから」とつぶやいた。毎日の稽古場では、部屋の関取衆を相手に同じ動きばかりを繰り返す。相撲のビデオは自分の取組を見て、白鵬が先人の技を研究するようなことはしない。やり方は千差万別だが、そんなところにも、綱との差があるように見える。

 2年前の前回の綱とりは5日目に2敗。その反省を生かせず、再び序盤で夢がしぼんだ。対平幕で2敗も印象が悪い。放駒理事長(元大関魁傑)が「綱とりは苦しくなったね」と言えば、横綱審議委員会の鶴田卓彦委員長も「相当なダメージ。一段と厳しくなった」。日馬富士は「全然大丈夫。1日1番。自分の相撲を取り切りたい」と諦めないが、残り全勝して優勝争いの行方を見守るしかなくなった。【大池和幸】