<大相撲秋場所>◇11日目◇21日◇東京・両国国技館

 西前頭11枚目の臥牙丸(ががまる、24=北の湖)が大関初挑戦で把瑠都(26=尾上)を下して1敗を死守した。グルジア出身で関取最重量199キロの巨漢が優勝争いに踏みとどまった。

 ド迫力の欧州巨漢対決を制したのは、まさかまさかの臥牙丸だった。198センチ、184キロ把瑠都のもろ手突き、のど輪を食らっても、187センチ、199キロの体で耐えて反撃。下から押して背中を向けさせ、送り出した。白い肌を紅潮させ、ガッツポーズも見せた。

 臥牙丸

 いや~、マジでうれしい。初めての大関戦で勝った。勝てるとは思わなかった。体が生きたね。1発2発効いたけど、うまく脇の下に入った。

 昨年の九州場所前には把瑠都と1週間も稽古したが「1回も勝てなかった」。この日の仕切りでは「見たら怖くなるから」と目を合わせられなかった。それでも勝った。初日黒星から10連勝。横綱以外の上位が星を落とす中、ダークホースがV戦線に浮上してきた。

 部屋付きの木瀬親方(元前頭肥後ノ海)に恩返しの勝利だ。臥牙丸は木瀬部屋からデビュー。ただ昨年5月に不祥事で部屋が消滅し、北の湖部屋に移籍した経緯がある。今も木瀬部屋の復活を「そうなってほしい」と強く願っている。

 「日本のお父さん」と慕う木瀬親方からは把瑠都戦を前に10回以上も電話がかかってきた。「木瀬部屋から初めて大関に挑戦する力士だから。相撲はうまくないから、一生懸命攻めろと言ってくれた」。忠実に守り、殊勲の星を飾った。

 遠くグルジアにいる実母ニノさん(49)にもいい報告ができる。数年前から内臓に疾患があり、今も週3、4回は通院。「ドキドキするからテレビで相撲が見られない。それで前に倒れたことがある」と臥牙丸。取組後はインターネット電話で元気な姿を確認し、土俵への活力にしている。木瀬親方の「万が一倒れたら大変。会えるときに会っておけ」という計らいで、8月には母国に戻っていた。

 V争いは「全然考えてないよ。幕内はみんな強い。上位の人は倍強いからね」と笑った。10勝は幕内の自己最多タイ。新たな領域を目指し、今日12日目、琴奨菊に大きな体でぶつかる。【大池和幸】