日本相撲協会は8日、福岡国際センターで臨時理事会を開き、(1)週刊新潮が報じた「鳴戸部屋問題」に関する調査報告と、(2)7日の鳴戸親方(元横綱隆の里)死去による部屋の継承問題が話し合われた。(1)については鳴戸親方の突然の逝去により、調査を打ち切ることを全会一致で承認した。相撲協会を監督する立場にある中川正春文部科学相が調査の続行を求めたのに対し、相撲協会は当事者とされた鳴戸親方の死去を理由に、調査打ち切りの方針を即決する結末となった。(2)については同部屋付きの西岩親方(元幕内隆の鶴)の継承が承認された。

 午後1時50分に開始した臨時理事会は、約20分後の同2時10分には終了。2時半すぎから二所ノ関広報部長(元関脇金剛)が会見し、一連の週刊誌報道について、理事会での調査報告の内容を説明した。

 まず、隆の山がインスリン注射をしていたとされる問題については「隆の山が親方の許可を得た上で、自分で打ったという調査結果を報告した。隆の山本人も認めて反省している」と説明。インスリン注射していたという衝撃的な事実が明らかになった。

 さらに、同広報部長の会見を補足説明した協会関係者によると、相撲協会はこのインスリン注射の一連の行為について、顧問弁護士、外部の弁護士に相談した上で、違法行為ではないことを確認したという。ただし、道義的、倫理的な問題は残るため、事情聴取の場で隆の山には注意した、とした。

 協会は10月27日に都内で、故鳴戸親方、隆の山から事情聴取しており、親方が自分の治療用に持っていたインスリン注射を、隆の山を太らせるために打たせていたとされる報道について、事実関係の説明を求めていた。また、同親方の暴力、同部屋の行司のセクハラ問題など、週刊誌報道では疑惑がいくつか報じられており、緊急理事会の中では、調査結果が報告され、再発防止策が講じられた。短時間で次々と要点を確認したことになるが、それだけ協会幹部は今回の緊急理事会のために法的根拠などを含め、周到に準備してきたことをうかがわせた。

 二所ノ関広報部長は「鳴戸親方の突然の逝去により、調査を打ち切ることが承認された。ただし2度とこのような問題が起きないための再発防止策を徹底するとともに、すべての部屋に再度徹底させる」と端的に説明した。

 ただ、この日相撲協会が調査打ち切りの結論を出す直前の午前中、協会を監督する立場にある文科省の中川大臣は、この問題に触れ、調査の継続を求めていた。こうした監督官庁トップのコメントと、この日の協会の動きは、やや整合性を欠いた感は否めない。

 鳴戸部屋の継承については、故鳴戸親方の典子夫人の意見も尊重した上で、部屋付の西岩親方が8日付で年寄「鳴戸」を襲名することが全会一致で承認された。

 放駒理事長(元大関魁傑)は会場を後にする際、「稀勢の里は大関とりに挑戦する場所。(西岩親方とは)今まで同じ部屋でやっているし、気心も知れている。しっかりやって欲しい」と話した。

 弟子の大関昇進に全精力を注いでいた師匠が、疑惑報道を抱えながら体調を崩し急逝。こうした緊急事態に、相撲協会は現役力士が相撲に集中できる環境を整えることに精いっぱいだった。