<大相撲九州場所>◇2日目◇14日◇福岡国際センター

 関脇稀勢の里(25=鳴戸)が、大関とりへ連勝スタートを決めた。終始攻めて東前頭3枚目の阿覧(27)を危なげなく突き出した。九州場所2日目といえば、昨年は白鵬の63連勝をストップ。当時の「脇役」が、今度は「主役」として場所を盛り上げる。今日3日目は、2大関を連破した東小結豊ノ島(28)との対戦。横綱白鵬(26)新大関琴奨菊(27)ともに2連勝とした。

 この1年で成長した姿を見せつけた。稀勢の里はやや上体を起こされたが、逆に下からはね上げるように突き押しを繰り出した。7日に急逝した先代鳴戸親方(元横綱隆の里)が語っていた「下から上の動き」を忠実に守って完勝。土俵下に落ちた阿覧を見届け、悠然と勝ち名乗りを受けた。昇進目安の11勝にまた前進。「落ち着いていたかなとは思いますけど」。初日は師匠への思いからか思わず目を潤ませたが、この日は顔色を変えなかった。

 「1年は早いっすね」とつぶやいた。1年前が転機だった。昨年の九州2日目、白鵬の大型連勝を止めた。当時は東前頭筆頭。既に三役経験も長く、大関候補と期待されながら伸び悩む「伏兵」の大仕事だった。季節は巡り、今場所は主役の1人として土俵に立つ。「自分を信じてやるしかない。自信はついてきてますから」。あの日を境に、今年は関脇4場所中3場所で2ケタ勝利と安定。成長を確かに感じ取っている。

 “稀勢ギャル”の黄色い声にも応えた。向正面の客席には「天国へ届け大関だ!」とプラカードを掲げる女性4人組の姿が。いずれも福岡在住で「真剣なまなざしがいいですね」と目をウットリさせた。稀勢の里の出身地・茨城から来た後援者と合同応援。稀勢の里も「うれしいですね」と援軍に感謝した。

 先場所後に部屋の後輩の十両隆の山が結婚を発表。それを受けて稀勢の里は「自分はまだまだ、まあ考えてない。今はまだやりたいことがあるし、相撲も中途半端だし」と語った。相撲道は道半ば。大関昇進した時に、一人前との自覚があるのかもしれない。

 今日3日目は豊ノ島を迎える。過去15勝6敗と圧倒しているが、大関連破で勢いに乗るだけに油断は禁物だ。「本当にまだ始まったばかり。気を抜かないでやりたい」。客入りが寂しい場所に明るい話題を提供していく。【大池和幸】