<大相撲九州場所>◇8日目◇20日◇福岡国際センター

 新大関琴奨菊(27=佐渡ケ嶽)が、関脇鶴竜(26)を上手投げで下し、勝ち越しを決めた。新大関の初日から8連勝は、昭和以降で歴代5位。横綱白鵬(26)とともに無敗を守った。大関とりを目指す関脇稀勢の里(25)と、平幕の豪風(32)と若荒雄(27)が1敗で追う展開となった。

 琴奨菊の大応援団は、待ち切れなかった。しこ名が呼び上げられる前から、琴奨菊コールが起きた。向正面を中心に後援者ら200人以上が、福岡・柳川市からバス4台に乗って来場した。今場所最高の盛り上がりの中、新大関は勝ちきった。左四つで攻め込み、こらえる鶴竜を上手投げで転がした。

 昭和以降、82人が大関に上がったが、その多くが昇進場所で苦しんだ。無敗で勝ち越しを決めたのは、琴奨菊が8人目で、朝青龍以来9年ぶりとなった。「大関になれてホッとしたのと、地元開催で頑張らないと、と思った。意識する間もなく忙しくして、場所が始まって、すごく穏やかに過ごせています」。

 1年前の中日が、転機だった。あの日も鶴竜戦。2勝5敗で迎えながら、大応援団に声援された。「ぶちかましたれ」。迷いを吹っ切り電車道。取組後に号泣した。この日は、笑顔で後援者の輪に加わった。万歳三唱の中、見送られた。

 今場所後、柳川市を中心にあいさつ回りする。千秋楽の翌28日に、柳川市長への表敬訪問が予定されるが、優勝会見が入ればキャンセルされる。12月17日は都内で、大関昇進披露パーティーもある。モチベーション維持には事欠かない。

 NHKの「サンデースポーツ」から、優勝した場合の出演依頼が届いた。支度部屋では優勝を口にしなかったが、本心はどうか。後援会事務局長が乗るバスでは、携帯に届いた琴奨菊のコメントが、伝えられた。「応援ありがとうございました。皆さんのおかげで勝つことができました。優勝目指して頑張ります」。残り7日間。06年初場所の栃東以来となる、日本人Vに挑戦する。【佐々木一郎】