<大相撲九州場所>◇11日目◇23日◇福岡国際センター

 関脇稀勢の里(25=鳴戸)が3敗目を喫し大関昇進がピンチとなった。全勝の横綱白鵬(26=宮城野)の鋭い踏み込みに防戦一方となり、寄り切られた。「白鵬キラー」ぶりを発揮できず、8勝で足踏み。昇進目安の11勝へ、あと4日間で3勝が必要。苦手の2大関戦を残しており正念場を迎えた。新大関琴奨菊(27)は初優勝が遠のく2敗目。2敗を守った平幕若荒雄(27)との2人が、横綱を追う展開となった。

 稀勢の里は立ち合いでグイと押し込まれた。ここまではイメージ通り。得意の左おっつけを狙った。ところが白鵬が脇を固める右腕は、全く崩れない。攻め手を欠いたまま、スピードと気迫に翻弄(ほんろう)され、ズルズル下がった。最後は右を差されて勝負あり。白鵬キラーがなすすべなく土俵を割った。

 「立ち合いはよかったと思う。気持ちで負けた」。激闘を物語るように鼻から出血。口まわりと腹に飛び散っていた。今場所結びで最多25本の懸賞がかかった注目の一番。館内を沸かせたが、痛い3敗目で大関昇進に黄信号がともった。

 勝利の方程式は描かれていた。この日の朝稽古では立ち合いを入念に確認。速い白鵬に踏み込まれることを想定し、やや受けた体勢からの左おっつけを繰り返した。ただ、いつにもまして出足鋭い白鵬には通じなかった。「完全に封じ込められていた。いやもう、守るのに必死でしたね」。横綱の強さを潔く受け入れるしかなかった。

 昇進が苦しくなってきた。残り4日で3勝が必要。相手は平幕2人のほかに過去3勝16敗の把瑠都、11勝23敗の琴奨菊が控える。どちらかを倒さないといけない。「ここまで来たら最後までやるだけ。なるようにしかならないから」。急逝した先代鳴戸親方(元横綱隆の里)からは、苦しかった大関、横綱昇進時の体験談を何度も聞いた。開き直って勝利を求めるしかない。【大池和幸】