<大相撲九州場所>◇13日目◇25日◇福岡国際センター

 横綱白鵬(26=宮城野)が、大関琴欧洲(28=佐渡ケ嶽)を豪快な下手投げで破り、初日から13連勝で21回目の優勝を決めた。3敗力士の結果を気にすることもなく、結びの一番を勝って決めた。白鵬が13日目に優勝を決めるのは今回が3度目。九州場所は5年連続の優勝となった。不祥事や東日本大震災などに揺れた1年を横綱が締めくくった。6場所ぶり9度目の全勝優勝を目指す。

 2メートル3センチの琴欧洲を豪快に投げ飛ばし、白鵬が13日目で優勝を決めた。相手の左脇にあいたすきを見逃さなかった。もろ差しの体勢から頭を抜いて、左脇にねじ込む。不意を突かれた琴欧洲の体勢が崩れたところを見逃さなかった。やぐら投げにも似た下手投げで角界最長身を1回転させた。「脇があいていたから飛び込んだ。思い切ってやった」と取組直後は興奮気味だった。状況を見極める判断力、頭を切り替えるスピード、48秒4の取組にも尽きないスタミナ。場内に横綱への歓呼の嵐が起こった。

 下手投げは、福岡入り後、iPadの動画サイトで見たバルセロナ五輪金メダルの古賀稔彦さんの映像が記憶の片隅に残っていたからだ。「モンゴル相撲や古賀さんのオリンピックの映像を見てて」。世界を制した投げ技が琴線に触れた。

 13日目に優勝を決めるのは3度目。最多の4度を誇るのは千代の富士(現九重親方)だ。白鵬は晩成の大横綱に敬意を示す。場所前に「九重親方が初優勝したのも、横綱になったのも自分と同じ26歳になる年。まだまだだなと思いますよ」。

 その言葉を聞いた九重親方は「ここから俺と同じ31回を足したら50回を超える優勝じゃないか」と笑うが、白鵬へ賛辞を送る。「攻めが速くて重い。出稽古でタフな力士を肌で感じている。上に立つ者が(他より)上のことをやっているんだから強いはずだよ。まだまだ続くと思うよ」。

 不祥事に東日本大震災。春場所は中止になり、5月は技量審査場所へ。さまざまな出来事に揺れたが、場所前から各所で「いろいろあった1年だけど、締めくくりの場所はしっかり結果を出したい」と掲げていた公約を達成。全勝という次の目標に向けては「(優勝を決めて)心に余裕があるから、思い切ってやるだけです」。浮かれることなく、その目はすでに残り2日間へ向けられていた。【高橋悟史】