<大相撲初場所>◇6日目◇13日◇東京・両国国技館

 九重勢が台風の目になってきた。新入幕の千代の国(21)が臥牙丸を破り5勝目を挙げた。九重親方(元横綱千代の富士)の弟子への評価はまだ手厳しいが、それも期待の裏返し。中盤に差しかかり、躍進に注目だ。

 九重チルドレンの筆頭、千代の国が臥牙丸を退けた。立ち合いで踏み込むが199キロの相手は動かない。押し込まれたところでとっさに右に回り突き落とした。「気付いたら後ろは俵でした。一気に持って行くつもりだったのに周囲に聞くと動いたのは『3ミリぐらいな』って言われました」と振り返った。負けた直後の臥牙丸に花道でにらまれても、涼しい顔で引き揚げた。

 手厳しい九重親方(元横綱千代の富士)は「まだまだ。パワーもついていない」と前置きした上で「勢いがあっていい。しっかりと稽古を続けていけばケガも少なくなる」と話した。

 師匠と弟子全員が行う交換ノートが関係を強固にしている。朝稽古の内容、稽古や取組の感想や課題などを、大学ノート約半ページ分書いて提出。稽古の合間に親方は赤ペンで返事を書く。九重親方は「自分で考えさせるため。毎日同じこと書いてくるやつもいるが、ちゃんと自分の課題が分かっているやつもいる。ちゃんと書いてくるやつは結果も出ている」と暗に千代の国の姿勢を評した。

 千代の国の書きためたノートは開始から1年半が過ぎ、4冊目の後半部分に差しかかった。今場所を「ここまでは出来過ぎだと思う」と謙虚でも「親方からは『お前がしっかりしろ』と言われています」と生徒会長並みの叱咤(しった)を受ける。課されている毎日のノルマ、腕立て伏せ1000回、四股500回を素直にこなす。「明日からまた頑張ります」と言い家路に就いた。【高橋悟史】

 ◆九重部屋の躍進

 大関千代大海が10年初場所で引退。千代白鵬は八百長問題の影響で11年4月に引退した。部屋の関取はいなくなったが、同年中に3人も新十両が誕生した。名古屋場所で千代の国、秋場所で千代嵐と千代桜が昇進を果たした(2人は故障休場の影響で現在は幕下)。初場所で千代大龍が十両に上がり、西幕下筆頭の千代鳳は3連勝中。新十両を目前にしている。