<大相撲初場所>◇8日目◇15日◇東京・両国国技館

 日大相撲部出身の元学生横綱で、今場所が新幕下の東15枚目・佐久間山(23=北の湖)が、序ノ口デビューから無傷の25連勝を飾った。元小結板井の歴代1位26連勝に王手をかけた。西22枚目の寺下(27)を逆転の小手投げで破って勝ち越し。昭和以降最速となる所要5場所での十両昇進にも前進した。

 途切れる寸前だった連勝を、執念でつないだ。佐久間山は立ち合い直後に首から右腕にかけてしびれが走った。さらにもろ差しを許し絶体絶命。それでも相手の寄りを何度もこらえ、感覚がない右からの小手投げを豪快に決めた。怪物候補らしい勝ち方だった。「危ないと思ったけど我慢できた。最後まであきらめなかったのがよかった」。

 母厚子さん(52)が観戦する中で、序ノ口デビューから最多連勝記録に王手をかけた。厚子さんは国技館入りする息子の顔を見て「普段通りだ。リラックスしている」と安心していたが、取組が始まると怖くてほとんど見られず。「子供を産んだ時より苦しかったね」と深く息をついた。

 大学2年時に父幸一さん(享年52)が急逝。それから母が東京都北区の居酒屋を1人で切り盛りする。常連客でにぎわう店内には、朝青龍が優勝旗を受け取る写真が飾ってある。学生時代の佐久間山が自分で撮影したものだ。子供の頃から相撲好き。特に朝青龍の大ファンだった。

 中3の時、朝青龍に頭を下げさせた経験もある。花相撲で「僕とやってください」と直談判。実現しなかったが、お騒がせ横綱から「できなくてゴメンな」と謝罪を受けた。土俵下の控えで出番を待つ間、腕を組んで両足を広げる朝青龍のマネをしていたほどだ。

 小学校の頃から当日券を買って、国技館に出入りしていた。学生時代は母が撮影したビデオで研究に没頭した。そして今は、父の写真をまわしに挟んで土俵に上がる。今場所に7戦全勝なら、所要5場所での十両昇進が濃厚。昭和以降で最速記録となる。

 きょう16日の9日目に記録に挑戦する。「連勝は意識しない。あと3つ、自分の相撲を取りきりたい。これからは自分との勝負です」。両親のためにも、早く関取の座をつかみたい。【大池和幸】

 ◆佐久間山貴之(さくまやま・たかゆき)

 本名・佐久間貴之。1988年(昭63)8月7日、東京都北区生まれ。埼玉栄高から日大に進学。2年時に全国学生相撲選手権個人戦を制して学生横綱に。11年技量審査場所で初土俵。得意は右四つ、寄り。185センチ、145キロ。