<大相撲初場所>◇14日目◇21日◇東京・両国国技館

 初優勝を決めている大関把瑠都(27=尾上)の周辺が盛り上がってきた。今日22日に来日する把瑠都の母ティナさんのもとには、エストニアを含む数カ国から取材が殺到。尾上部屋がある東京・大田区の池上西銀座睦会では、初優勝を祝した優勝セールの準備が進められている。この日把瑠都は大関琴欧洲(28)を寄り切りで破り14連勝。千秋楽は全勝をかけて横綱白鵬と対戦する。

 優勝を決めても把瑠都はがむしゃらに前に出た。「立ち合いは最高だった」と言うようにもろ手突きで先手を取る。琴欧洲の左まわしをつかむと振り回し、その勢いのまま寄り切った。「とにかく突きはなして行こうと。今場所は勝ち越してもホッとすることはなかった。とにかく勝ちたい。勝ちたい気持ちしかない」と取組に集中していた。白鵬戦に向けても「今年、1つも負けていない。思い切り自分の相撲を取りたい」と迷いはない。

 母ティナさんのもとには、エストニアのテレビ局、新聞社、ラジオ局から取材が殺到した。把瑠都が「仕事に行けなかったみたい」と言うほど。地元だけでなく、ロシアと英国のテレビ局も取材に訪れたという。把瑠都のもとにもエストニアのテレビ局から電話取材があった。「忙しくて一言だけしか話せなかった」と話した。

 一方、尾上部屋の地元、池上駅近くの池上西銀座睦会の数店舗では、21日朝に早くも優勝を祝うポスターが貼られていた。実は10年夏場所中に優勝の機運が高まり、100部作製したものだ。その時は優勝を逃し結果的に“勇み足”になったが、池上地区商店会連合会の間宮一雄会長が、来るべき優勝に向け大切に保存していたものだ。

 ベーカリー・ロアモンドでは土俵の形をしたアップルパイを早ければ23日から発売予定。同店の奈良野由美(よしみ)さんは「新大関を決めた時も発売しました。当時は準備を進めていたけど、今回は間に合いませんでした」と笑顔を見せた。レストラン軒(のき)では把瑠都が通っていた時によく注文したチーズカツレツ、ハンバーグ、ドリアを優勝記念メニューとして提供する。肉のふじかわではもうけを度外視したセールを予定している。店主藤川雅敏さんは「商品によっては半額」と、すでに値札は完成し準備は万端だ。

 今日千秋楽の朝に来日する母、そして地元商店街の後押しを受け把瑠都が白鵬に真っ向勝負を挑む。【高橋悟史】

 ◆記録メモ

 十両と幕内ともに全勝優勝した力士は、過去には元横綱北の富士だけ。把瑠都は東十両11枚目だった06年春場所を全勝優勝しており、千秋楽に勝てば史上2人目の快挙を達成する。