<大相撲春場所>◇初日◇11日◇大阪府立体育会館

 横綱白鵬(宮城野)が「特別な1日」を白星で飾った。東日本大震災から1年のこの日が、27歳の誕生日。西小結栃煌山(25)に攻められ、一瞬ヒヤリとしながらも突き落とし。昨年は八百長問題で中止となり、2年ぶり開催の春場所で通算22度目の優勝に発進した。

 やはりこの日の土俵には特別な思いがあった。白鵬は最後の仕切りの直前、やや緩んだような顔になった。「ちょっとボーッとしてた。緊張してたのかな」。そんな影響もあったのか、過去12戦全勝の栃煌山に手を焼いた。得意の右四つになれず、一瞬、もろ差しを許した。それでも体を揺さぶって右をねじ込むと、左から突き落とし。「勝負に勝って、相撲に負けた。そんな内容」と振り返った。

 大震災から1年の日が、くしくも2年ぶり春場所の初日と重なった。そして27歳の誕生日でもあった。「いろんな意味で特別な1日」と位置づけていた。「いつも通りのようだが、違う感じだった。(理事長の)協会あいさつも、いつもと違っていたしね」。昨年は朝稽古後に関係者から贈られた誕生日ケーキも、今年はなかった。

 1年前の震災は44階の自宅マンションで遭遇。「東京で怖い思いをしたが、東北に行ったら、とんでもないことが起こったなと。被災地への気持ちは誰よりも強いものがある。決して忘れちゃいけない」。昨年6月に慰問で東北3県10市町を巡回し、各地で土俵入り。壊れた岩手・山田町の土俵を力士会の支援金と自身の懸賞で修復中で、4月下旬にも完成の見込みだ。

 この春場所前には大阪での震災復興の募金活動に参加。「寒い中、来てくれてありがとう」と、1人1人に声をかけた。すると日本相撲協会の先発事務所に「声をかけてもらってうれしかった」と、感謝する電話が届いた。横綱の義援活動が、各地で影響を与えている。

 昨年の不祥事の影響で、大阪に2年ぶりの場所。震災復興を誰もが願うこの日、角界にとってもあらためて再生を誓う日となった。白鵬は「待ちに待った場所だった」と語り、バースデー白星と聞かれると「まあ、よかったのかな」。最後にようやく、小さな笑みが漏れた。【大池和幸】