貴乃花部屋に関取が誕生した。日本相撲協会は23日、東京・両国国技館で名古屋場所(7月8日初日、愛知県体育館)の番付編成会議を開き、ともにモンゴル出身の貴ノ岩(22=貴乃花)と鬼嵐(29=朝日山)の新十両昇進を決定。貴乃花親方(39=元横綱)にとって、04年の部屋継承以来、自らが育てた初の関取となった。

 04年2月に部屋を継いでから、8年3カ月。貴乃花親方に、新十両誕生の知らせが届いた。自らは2年弱で関取になった平成の大横綱は、指導者として生みの苦しみを味わった。「長かったと言えば、長かった」。貴ノ岩が勝ち越しを決めた13日目。「おかみが興奮状態で電話してきた。落ち着かせるので精いっぱいでした」と苦笑いした。

 現在、弟子は13人。後援者からの期待も大きかった。「よく『関取はまだですか』と言われました。私が焦ると弟子が焦る。制御しているのが癖になりました」と独特の表現で苦闘の日々を振り返った。重視したのは、基本の繰り返し。「教える方が、迷ってはいけない。勇気づけ、辛抱強くさせ、本人に基本の大切さを伝えました」と話した。

 留学先の鳥取城北高2年で、国体4強に入った貴ノ岩は「入門した時、親方に教えてもらったしこは踏めなかった」と話す。昨年の夏場所で左足首を骨折。三段目まで番付を落としたが、そこから5場所連続の勝ち越しで、昇進を果たした。貴乃花の弟子という重荷はあったのか?

 「それをプレッシャーにしたら、もっと先、頑張ることはできないと言い聞かせました」。師弟とも苦しみを消化した先に、喜びが待っていた。【佐々木一郎】

 ◆貴乃花部屋の関取

 04年2月、二子山部屋の部屋付きだった貴乃花親方が継承し、貴乃花部屋に部屋の名称が変わった。この時、元大関貴ノ浪が平幕、五剣山が十両に在籍。しかし、直後の04年夏場所は五剣山が幕下に陥落し、貴ノ浪は場所途中で引退。関取不在が続いていた。