<大相撲名古屋場所>◇5日目◇12日◇愛知県体育館

 「やんちゃキャラ」の三役候補が、潜在能力を発揮し始めた。幕内2場所目の千代大龍(23=九重)が、佐田の富士(27)との取り直しを制して初日から5連勝。これまでの引き技オンパレードから一転、今場所は前への力強い相撲で躍進している。

 勝ちっ放しの千代大龍が、意気揚々と引き揚げてきた。「いやー、うれしい。この5連勝は。あと3つ勝ったら勝ち越しなんで」。内容が伴う結果に胸を張る。初日からの決まり手に引き技はゼロ。過去6場所は、はたき込みと引き落としが計41%もあった。小手先の相撲を批判されても「気にしない」とふてぶてしさを貫いてきた。ただ部屋頭となって自覚も芽生えた。日体大で学生横綱の大器が変わり身を見せ始めた。

 佐田の富士との最初の一番は右上手投げで同体に持ち込んだ。取り直しは左四つから寄り切り。当たってすぐ左に動いたように“癖”がのぞいたが、敢闘精神アンケートで最多票。ファンも認める内容だった。幕下15枚目付け出し格デビューから8場所目。髪が出世に追いつかず、ちょんまげ姿は今場所から。170キロ近い巨体とスピードで台風の目になりつつある。

 横へ、後ろへと土俵上を動くたび、師匠の九重親方(元横綱千代の富士)の説教が飛んでくる。3月春場所は十両で11勝も「1番くらいしかほめられなかった」。けがで途中休場した新入幕の先場所は「1回もほめられてない」。ところが前日4日目の取組後。日本料理をごちそうになったうえに「ほめてもらった」と満面の笑みだ。

 占い好きの23歳。1月の初場所前、銀座の占い師に「守るものが必要。結婚したほうがいい」と言われた。「まだ結婚するほど顔じゃない。そのためにも番付を上げないと。まあ、相手はいませんけど」。こんなよこしまな向上心も、悪童キャラらしい。今場所の目標には三賞受賞を掲げる。

 地方場所は初観戦だった母夏美さん(44)の前で、幕内自己最多タイの5勝目。実は関取昇進後は給料の半分を仕送りする孝行息子なのだ。母の横にいた妹の南美さん(21)に「ハイ」と小遣い3万円を手渡すと、帰りの車にさっそうと乗り込んだ。【大池和幸】