<大相撲名古屋場所>◇6日目◇13日◇愛知県体育館

 東前頭13枚目の大道(だいどう、29=阿武松)が、平幕でただ1人の6連勝を飾った。勢(25)を逆転の突き落としで撃破した。野球賭博の関与により2年前に謹慎全休した名古屋場所で、謙虚に白星を重ねている。

 大道は押し込まれても、踏ん張った。肩透かしに逃げる癖を我慢し、左からおっつけ気味に突き落とした。続く2番で舛ノ山と千代大龍に土。平幕でただ1人の勝ちっ放しだ。「相撲は完全に負けてましたね。連勝はちょっと信じられない。普段なら残せない状況でも残せてる」。いつもはスロースターターが5場所ぶり初日白星で勢いづいた。

 夏が来ると、あの出来事をあらためて胸に刻む。2年前の名古屋場所前に、野球賭博問題が発覚。多数関与した阿武松部屋は揺れに揺れ、十両だった大道も場所を謹慎全休。幕下に陥落した。犯した過ちを、今も悔やむ。「犯罪ですから。部屋や応援してくださる方に迷惑をかけた。絶対に忘れちゃいけないです」。

 部屋の名古屋宿舎には、親方と力士による寄せ書きが掛けられている。賭博問題発生後、全員で筆を走らせた。大道は「深く反省し稽古する」と書いた。師匠の阿武松親方(元関脇益荒雄)は「再評価していただくためには、いい相撲を取ること。100の言葉より行動です」。心を入れ替えて努力を重ねたからこそ、こんな連勝につながった。

 専大2年時に、母由美子さんをがんにより53歳で亡くした。現在、都内の実家に暮らす父敏夫さんは、前日12日が71歳の誕生日。「白星で祝ってくれてよかった。何で勝ってるんだろう。彼女でも見つかったのかな」と驚く。1年前には左足の膝から下を、菌感染で失った。息子の頑張りが何よりの楽しみだ。大道は「怖くて見られないから」と観戦歴がない父を、いつか招待したいと考えている。

 幕下だった3年前にあごを骨折。10日間を流動食のみで過ごし、体重が15キロ減ったこともある。幕内になった今も師匠からは「ファンを感動させる相撲を取れ」と口酸っぱく言われる。「まだ全然、そんな相撲じゃない。まずは勝ち越すこと。それだけです」。謙虚に控えめに、白星を積み重ねていく。【大池和幸】

 ◆大道健二(だいどう・けんじ)本名・中西健二。1982年(昭57)8月21日、東京都葛飾区生まれ。梅田小4年から白鳥相撲道場に。千代大龍は道場の後輩。しこ名の由来の大道中から目黒学院高。専大4年で東日本体重別無差別級優勝。05年春場所初土俵。10年春場所で新十両、昨年名古屋場所で新入幕。最高位は西前頭9枚目。愛称「ケンちゃん」。得意は右四つ。189センチ、169キロ。独身。