八百長関与で相撲界を追放された蒼国来(29=荒汐)の復帰が正式決定した。日本相撲協会は3日、臨時理事会を開き、八百長問題をめぐる解雇無効の判決に対し、控訴を断念。11年4月14日付で下した解雇処分を取り消すことを発表した。北の湖理事長(59=元横綱)が本人や荒汐親方(58=元小結大豊)と東京・両国国技館で会談し、解雇通告時と同じ西前頭15枚目で名古屋場所(7月7日初日、愛知県体育館)からの出場を決めた。今日4日から、荒汐部屋で稽古を本格的に始める。

 青の着物をまとった蒼国来が、テレビカメラ11台など100人を超える報道陣の前に笑顔で帰ってきた。「2年間つらかったです。でも北の湖理事長の『申し訳なかった』の言葉と復帰への配慮はうれしかった。感動しました」。理事会後、2年ぶりに両国国技館内に出向いて北の湖理事長らと会談。準備期間を考慮した名古屋場所からの出場と、当時の番付と同じ西前頭15枚目の地位を約束された。本人の希望が全面的に受け入れられた。北の湖理事長も「急には無理。7月まで余裕を持たせる必要もある」と説明した。

 2年間は相撲を離れ、トレーニングジムでの自主練習に加え、1年前には東京・日野市内のラグビークラブで鍛えた。「土俵への怖さはない。できることはやってきたつもり。体重も135キロで変わっていない。部屋の稽古で明日からまわしをつけます」と前を向いた。まずは、ファン感謝祭を兼ねて一般公開される横綱審議委員会稽古総見(27日、両国国技館)へ向け、体作りを進めていく。

 すでに今週から荒汐部屋で稽古を開始している。前日2日からは荒汐部屋の自室に戻り、喜びをかみしめた。この日の正式決定後には中国の家族に電話報告。弁護団からは3人の弁護士事務所の頭文字をとった「虎・藤・柳」が描かれた化粧まわし寄贈の計画も力に変えている。

 1年前までは相撲を見ることさえ嫌だった。「やっと見られるようになった。力士も変わった。知らない子もいるので負けたくない」と対戦イメージも描き始めた。「土俵を離れていると、地に足がつかない感じになる。元に戻すのは想像以上に大変」と長期離脱経験のある親方衆の厳しい声は多い。それでも荒汐親方、弁護士団、2万を超える署名を集めてくれたファンに「恩返しできる相撲をとる」と宣言した。【鎌田直秀】

 ◆蒼国来栄吉(そうこくらい・えいきち)本名・恩和図布新(おんわとうふしん)。1984年1月9日、中国・内モンゴル自治区生まれ。荒汐部屋に所属し、03年秋場所初土俵。10年初場所新十両。同年秋場所新入幕。最高位は東前頭13枚目。得意は右四つ、投げ。新入幕時の体格は186センチ、128キロ。

 ◆八百長問題

 2011年2月、野球賭博事件で押収された携帯電話に八百長をうかがわせるメールが残っていたことが発覚。角界を揺るがす大問題となり、同年3月の春場所は中止になった。日本相撲協会の特別調査委員会は親方、力士計25人の八百長関与を認定し、引退勧告などの処分で事実上追放した。同年5月は夏場所に代わる技量審査場所を実施。処分を拒否して解雇された幕内蒼国来と十両星風は相次いで力士としての地位確認訴訟を起こした。