<大相撲夏場所>◇7日目◇18日◇東京・両国国技館

 悲願の初優勝へ、大関稀勢の里(26=鳴戸)が第1関門を突破した。関脇把瑠都(28)に土俵際で投げ技を食らうもこらえて寄り倒し。過去5勝21敗と苦手とし、昨年夏場所千秋楽では優勝決定戦進出を阻まれた因縁の相手を退けて、初日から7連勝を飾った。

 土俵の上に、そっと手を置いた。その位置は、仕切り線から離れていた。こぶしにして4個分も。だが、足の位置は今までと変わらない。立ち合い。稀勢の里は手を、より体の近くに持ってきた。重心を後ろに掛けて、踏み出す力を足腰にたくわえた。その勢いが過去、大きく負け越している天敵の把瑠都に伝わった。

 左がささった分、右上手をつかまれた。怪力の相手優位に見える体勢。だが、ひるまなかった。「ああなったら前へ出るしかない」。左肩に体をかぶせて、低く出た。立ち合いの勢いそのままに押し込む。土壇場で投げを食らうも、低くねじ込んでいた左が最後まで踏ん張った。1年前、勝てば優勝決定戦に進んだ千秋楽。そのときに食らった上手投げは、執念でこらえた。先に落ちたのは把瑠都の体。「必死だね。余裕はなかった」。安堵(あんど)の息を大きく吐き出した。

 「攻めの仕切り」が実を結んだ。先場所まで足の位置は今のまま、仕切り線の上に手を置いていた。その分、腕は伸びきり、前傾姿勢になっていた。「立ち合いは足に力を入れなきゃいけない。手に力を入れても戻る分、出遅れる」と八角親方(元横綱北勝海)。

 今場所、仕切り線の上に手を置いたことは1度もない。「今が一番、仕切りやすい感じがする。たまたまだけど、そうなった」。速さと強さを生かす仕切りを身につけた。北の湖理事長(元横綱)は「体はあれでスムーズになっている。伸び切ってなく、余裕がある。攻める仕切りになっている」と変化を感じた。

 生まれ育った茨城・龍ケ崎市から応援団40人が駆けつけた。来場者が注目の一番を選ぶ懸賞「森永賞」は、この取組。06年初場所の大関栃東以来、遠ざかる日本出身力士の優勝へ期待は高まるが「本当に、1つ1つの積み重ねですからね」。初日におろした「貴乃花」の浴衣を羽織り、足取り軽く引き揚げた。【今村健人】