<大相撲夏場所>◇8日目◇19日◇東京・両国国技館

 大関稀勢の里(26=鳴戸)が初日から無傷の8連勝を飾った。ここ1年間で3勝3敗の関脇豪栄道(27)に何もさせず、左四つから押し出した。昨年秋場所以来、自身3度目の全勝ターン。日本出身力士約7年ぶりの優勝に向けて期待は高まり、審判部も通常なら千秋楽で対戦する、同じく全勝の大関鶴竜(27)との一番を前倒しする可能性が出てきた。横綱白鵬(28)も8連勝し、横綱通算464勝で単独5位となった。

 何もさせなかった。それだけの強さが、稀勢の里にあった。昨年夏場所から1年間の対戦成績は3勝3敗。力が拮抗(きっこう)する豪栄道との一番を、ものともしなかった。左四つの体勢から、右をおっつけて一気に前へ。力強く押し出した。4場所ぶり、自身3度目の全勝ターン。「通過点ですけど、力士である以上、うれしいですね」と、素直に表情を崩した。

 場所前に敢行した出稽古。選んだのは豪栄道がいる境川部屋だった。「勢いある相手がいる部屋だから」と力を認めて乗り込んだ。そこで培ったのは馬力への対策と、体の反射。「今まで稽古はしていても、ずっと同じ相手だったのでパターンが同じ。体を合わせた瞬間に反応しちゃっていた。それを変えたかった」。場所前にインプットした“今までと違う感覚”が、本番で生きた。「いい結果が出て良かった」と喜んだ。

 06年初場所の栃東以来、約7年ぶりの日本出身力士の優勝へ、期待は日に日に高まってきた。来場者が注目の一番に選ぶ懸賞「森永賞」は、2日連続で稀勢の里についた。そして、審判部もこの期待を利用して動く可能性が出てきた。

 審判部長の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は「稀勢の里と鶴竜戦が早く見たくなってくるよね」と話した。通常であれば、4大関の中で東西の上位に位置する両者は千秋楽で当たる。だが「調子のいいうちに当たる方が盛り上がる。そういう取組をつくるのも楽しみですよ。やっぱり大関、横綱が勝っていかないとね」と、前倒しも示唆した。実現すれば異例となる。

 今場所は朝稽古でも取組後の支度部屋でも、ときおり笑顔をのぞかせる心のゆとりがある。「いい感じで行けている。(後半戦も)思い切って取ればいい」。20日は自身初となる初日からの9連勝がかかる。勝負の場所が、折り返した。【今村健人】