<大相撲夏場所>◇11日目◇22日◇東京・両国国技館

 大関稀勢の里(26=鳴戸)が、いよいよ最大の関門を迎える。西前頭3枚目の阿覧(29)を突き出して全勝を守り、先場所13日目から自己最多の14連勝を飾った。今日12日目は、過去16勝26敗の横綱日馬富士(29)と対戦。同じく11連勝の横綱白鵬(28)と直接対決で雌雄を決するため、負けられない大一番になる。

 誰よりも、稀勢の里が分かっていた。阿覧の引き技だけに気をつけて、危なげなく突き出した。初日から無傷の11連勝。先場所からの連勝は自己新の14に伸びた。だが、喜びはない。喜ぶはずもない。「ここからでしょ。明日(12日目)からが勝負だと思う」。いよいよ本格的に横綱、大関戦が始まる。最初の相手。それは、東の上位に位置する大関としてはいつもより1日早い日馬富士戦だった。

 最大の正念場。それは、白鵬戦前の最高の力試しでもある。09年4月。先代の鳴戸親方(元横綱隆の里)が生前中に稀勢の里は1度だけ、出稽古に行った。向かった先は、伊勢ケ浜部屋。前日に出稽古に来てくれた当時の大関日馬富士への“御礼”として訪ね、30番以上もこなした。以来、鳴戸部屋に来てくれる横綱とは何度も胸を合わせた。部屋の関取衆を除けば、誰よりも稽古した相手になる。

 今場所前も、2日連続で横綱が訪れた。ただ、2日目は境川部屋勢の来訪もあって、取組は7番だけ。その際「あまりできなかったのが残念」とつぶやいた。日馬富士も以前「稀勢の里には横綱になってほしい」と漏らしたことがある。横綱がライバルと認め、大関が受け止める互いの関係。過去1年間の対戦成績は、3勝3敗の五分だ。「思い切ってやります」。強い決意をにじませた。

 大一番を前に、地元茨城・牛久市内は沸きだした。駅前のショッピングセンター「イズミヤ牛久店」ではこの日から中央に60インチの大型テレビを設置。取組3番前からアナウンスし、立ち見を含む約50人が声援を送った。優勝カウントダウンセールも始め、白星を積み重ねるたびにセール品をさらに半額に。全勝優勝なら赤字覚悟で「15円」の特別商品も設けるという。日増しに高まる声援を「うれしいことです」と感謝した大関。そして「集中してやるだけ」と言った。11年の土俵人生。最大の勝負どころに突入する。【今村健人】