<大相撲名古屋場所>◇8日目◇14日◇愛知県体育館

 綱の威厳はなかった。横綱日馬富士(29=伊勢ケ浜)は右に動いて東前頭3枚目千代大龍(24)の左腕をたぐろうとしたが、突きを食らって尻から落ちた。座布団が舞い、どよめく館内で、苦笑交じりに首をひねった。

 春場所で敗れた相手にまたも屈した。横綱が初顔から同じ平幕力士に2連敗するのは、98年夏場所で貴乃花が敷島に喫して以来の屈辱。3日目の高安戦に続く金星配給で2敗目となり、V3を狙う名古屋で、優勝争いから後退した。今回で金星配給は在位5場所で7個目となり、在位36場所で8個の白鵬と比べると多さが際立つ。

 今場所12勝以下に終わった場合、「激励」を出す可能性を示していた横綱審議委員会の内山斉委員長(78)は「もうひと踏ん張りしてもらわないと困る。13勝は最低でも挙げてもらわないと、という気持ちは変わらない」と、あらためて“デッドライン”を示した。北の湖理事長(元横綱)も「自分から変わり気味にいって中途半端。思い切っていかないと」と指摘した。

 日馬富士は支度部屋に戻っても目はうつろ。「今日の勝負は終わった。また、気持ちを入れ替えて、気合入れて頑張ります」とだけ話した。