<大相撲初場所>◇7日目◇18日◇東京・両国国技館

 東前頭16枚目の大砂嵐(21=大嶽)が、東前頭14枚目の鏡桜(25)を寄り倒しで破り5勝目を挙げた。今日19日は、昨年亡くなった元横綱大鵬の納谷幸喜さんの命日。都内で営まれる一周忌法要には、王貞治氏(73=ソフトバンク球団会長)が駆けつける。大切な日を前に、大鵬の最後の孫弟子が力強い相撲で館内を沸かせた。

 天国の大横綱へ、力強い相撲をささげた。立ち合いでかちあげた大砂嵐は左を差し、右上手もがっちりつかむ。138キロの鏡桜をつり気味に寄って、最後は寄り倒した。通算100回出場の区切りを白星で飾った。「右四つになりたかった。立ち合いが残念だった」。勝って反省の言葉が出るのも向上心がある証しだ。

 あの日から、早くも1年がたつ。だからこそ、勝って迎えたかった。昨年の1月19日、元横綱大鵬の納谷幸喜さんが急死した。当時幕下だった大砂嵐は「オレの目の届くうちに関取になってほしい」という納谷さんの願いをかなえられず、涙した。今の大嶽部屋は、大鵬部屋を引き継ぐ形で誕生し、今も「大鵬道場」の看板が掲げられている。師匠の大嶽親方(元十両大竜)は、大鵬の弟子。孫弟子になる大砂嵐も、無念の思いを味わった。

 あれから1年。無事に関取になり、十両を2場所で通過して、今場所は入幕2場所目になる。正月には今年の目標を「三役」に定めた。毛筆で書き初めして、部屋の壁に張りつけた。エジプトから不安と希望を抱いて来日したころ、かわいがってくれた恩人が納谷さんだった。今も、自室で「大鵬」の名前入りマグカップを愛用し、夢の横綱を目指して努力を続ける。

 納谷さんの一周忌法要には、生前から親交が深かった王貞治氏も参列。大砂嵐は遠藤を相手にする。平幕対決では異例の懸賞14本が懸かった注目の一番は、きっと天国の横綱大鵬も楽しみに見ているはず。「いつもと同じ。相手が誰でも変わらない」。胸に秘める熱い思いは、土俵で表現する。

 ◆元横綱大鵬の納谷幸喜氏の死去

 昨年初場所7日目の1月19日午後3時15分、心室頻拍のため、両国国技館から6キロ離れた東京・新宿区の慶応病院で亡くなった。72歳。2日前に東京・江東区の自宅で定期健診中に呼吸困難に陥り、入院。一時は持ち直して相撲をテレビ観戦し、19日の朝も朝食を取ったが、その後に異変が起きた。初場所後の30日に営まれた通夜ではプロ野球の王貞治氏が、31日の葬儀・告別式では女優黒柳徹子と横綱白鵬が弔辞を読んだ。2月15日には国民栄誉賞の受賞も決まった。