第71代横綱鶴竜(28=井筒)が正式に誕生した。日本相撲協会は26日、夏場所(5月11日初日、東京・両国国技館)番付編成会議と理事会を開き、満場一致で昇進を決めた。昇進伝達式では“伝達ミス”で会場を間違った使者の到着が遅れたが、その間に練習した口上で思いを述べた。新しくつくる三つぞろいの化粧まわしは「鶴」と「竜」のデザインになることも明らかになった。

 よどみなく述べた。「謹んでお受けします。これからより一層、稽古に精進し、横綱の名を汚さぬよう一生懸命努力します」。

 前夜に決めた口上の言葉。飾らず、難しい文句もない。それが鶴竜らしかった。「土俵の上だけじゃなく、外でもいろんなところで品格が見られると思う。その全部を含め一生懸命、相撲のことを考えていこうと思って、言いました」。

 きらびやかな伝達式。その裏で珍事があった。午前8時49分。使者の八角理事(元横綱北勝海)らを乗せた車が出発したと一報が入った。しかし、理事会が開かれたボディメーカーコロシアムから車で10分ほどの大阪市天王寺区の法岩寺本館に、なかなか現れない。実は井筒部屋の宿舎がある西成区の法岩寺“別院”に行っていた。「連絡不足です。ピンポンを押しても出ないから、絶対違うと思ったんだけど…」と八角理事。到着は午前9時21分と遅れた。

 ただ、新横綱は相撲同様に冷静だった。「口上を間違えないように、ずっと練習してました」。師匠の井筒親方(元関脇逆鉾)と、29日で57歳の誕生日を迎えるおかみさんの福薗杏里さんに、最高の恩返しを届けた。

 夏場所への準備は着々と進む。関係者によると、土俵入りで使用する三つぞろいの化粧まわしデザインは「鶴」と「竜」に決まった。鶴竜が締める真ん中は「鶴が天に羽ばたく絵」。太刀持ちと露払いは「竜が天に昇る絵」になるという。雲竜型の土俵入りも「一番、間違ってはいけない」と歴代横綱の動画で勉強する熱心さ。誠実な勤勉横綱が、誕生した。【今村健人】