日本相撲協会は6月30日、大相撲名古屋場所(13日初日、愛知県体育館)の新番付を発表した。エジプト出身の大砂嵐(22=大嶽)が自己最高位の西前頭3枚目となり、初の横綱、大関戦が確実。初土俵から14場所目での横綱初挑戦は年6場所制となった58年以降、小錦の13場所に次ぐ速さだ。イスラム教のラマダン(断食月)で同29日から日中の飲食ができなくなり、27日の千秋楽まで続く予定。体調を考慮し、番付発表会見は異例の日没後に行われた。

 大砂嵐の会見は大嶽部屋宿舎のある愛知・稲沢市内のレストランで、日の入り後の午後7時半から始まった。日中に飲食できないことが考慮され、師匠の大嶽親方(元十両大竜)と相談の結果、異例の時間に設定された。直前に好物のバナナジュースを飲み干した大砂嵐は「今年の目標は三役に上がること。そのために大事な場所。ラマダンも心の稽古」と言い切った。

 入門3年目で初めて、イスラム教のラマダンが番付発表前から千秋楽まで続く。体調管理が難しい中でも、横綱への初挑戦を「横綱は相撲の神様。一番強い相手に、自分の相撲を取りたい」と心待ちにした。「かち上げて、突っ張って、そのあとにまわしを取って」と興奮気味。同席した師匠から「取り口全部話したら分かっちゃうよ」と突っ込みが入るほどだった。

 断食初日を終えた前夜は、宿舎で牛すじ入りガーリックチャーハン10人前で胃袋を満たした。会見後にはチキンカツカレー、ピラフ、空揚げ、エビフライなど、またも約10人前をたいらげた。「朝稽古は腹が減ってはいないので一生懸命やる。去年は7キロやせたので、今年は夜に、もっといっぱい食べます」。新十両だった昨年は名古屋場所の序盤にラマダンが始まって10勝5敗と活躍したが、より激しい闘いに備えて体重減の反省を生かす。

 夏場所では初の10勝を挙げ、自信もつかみかけている。だが場所中に右かかとを痛め、先月14日までは四股すら踏めなかった不安もある。さらにラマダンの試練も加わる。大砂嵐しか体験できないラマダン中の初金星への挑戦が始まった。【鎌田直秀】