<大相撲名古屋場所>◇13日目◇25日◇愛知県体育館

 逆襲を許して、左のかいなを返された瞬間だった。前頭11枚目高安(24=田子ノ浦)が、腕の力を抜いた。「審判が手を挙げてたので。向こう(照ノ富士)の足が出たんだなと分かりました」。立ち合いから突っ張り、左も差し、攻撃的に前に出た際に、踏ん張っていた照ノ富士の左つま先は既に土俵を割っていた。一瞬ヒヤリとさせながらも、2敗を死守した。

 母ビビリタさんはフィリピン人。今場所中、大人気のものまねメークタレント、ざわちんも母親がフィリピン人だと知らされ「そうなんですか?」と驚きの声をあげた。ざわちんは七変化でフィーバー中だが、変化知らずの高安は「自分の相撲を取るしかない」。言葉通り、難敵にも攻めのスタイルを貫いた。

 兄弟子の稀勢の里が1敗白鵬を破ってくれたおかげで、優勝争い首位に並んだ。今日14日目は2敗で並ぶ琴奨菊との大一番になる。平幕優勝なら12年夏場所の旭天鵬(西前頭7枚目)以来。「ここまで来たんで、残り2日何が何でも勝ち抜きたい。せっかく(大関との対戦を)組んでいただいたんで。倒すつもりで思い切っていきます」。力強く大関撃破を宣言した。【木村有三】