大相撲の第54代横綱で、咽頭がんの手術で声が出なくなったと一部で報じられた輪島大士氏(66)が9日、東京・江東区の高田川部屋へ、二所ノ関一門の連合稽古を見学に訪れた。久しぶりに公の場で元気な姿を見せ、関係者を激励した。

 大関貴ノ花の故花田満氏と仲が良かった縁で、大関の付け人を務めていた高田川親方(元関脇安芸乃島)とも懇意にしている輪島氏。見学後に筆談で応対し「元気になりました

 よろしく

 しんぱいわいらない」と、笑顔で体調の回復をアピールした。

 輪島氏の妻留美さんが今年7月にテレビの取材に応えて、昨年12月に下咽頭がんのために切除手術を受けたことを告白。手術は成功したものの声を失ったことを明かしていた。この日は自らのど元を押さえて声が出ないことを示し「ごめんなさい」のポーズを取ったが、表情は生き生きとしていた。高田川部屋に所属する遠縁の西幕下3枚目の達(たつ)を激励し写真撮影にも気さくに応じた。

 筆談では「達君わ石川県の出身でしんせきにあたります

 9月場所きたいしています

 よろしく」とし、さらに「遠藤わおなじ能登出身です

 よろしく」と、幕内遠藤についても気に掛けていた。握手した20歳の達は「ありがたいです。今場所は気合を入れていかないといけない。何としても(十両に)上がりたい」と意気込んだ。

 帰り際、軽快な足取りで車に乗り込んだ輪島氏は、親指を立ててほほ笑んだ。発車後も手を振り続けて、元気いっぱいだった。【今村健人】

 ◆輪島大士(わじま・ひろし)本名・輪島博。1948年(昭23)1月11日、石川県七尾市生まれ。日大3、4年時は連続学生横綱。70年初場所幕下付け出し(60枚目格)で初土俵。73年名古屋場所で横綱に昇進。「黄金の左」を武器に優勝14回。ライバル北の湖と輪湖(りんこ)時代を築いた。81年に引退し、花籠部屋を継承。しかし、85年に花籠名跡を担保に借金したことで相撲協会を離れた。86年に全日本プロレス入門。88年の引退後は学生援護会アメフト部の総監督、タレントなどでも活躍した。