<大相撲秋場所>◇初日◇14日◇東京・両国国技館

 新大関豪栄道(28=境川)が、痛恨の逆転負けで黒星発進となった。過去3勝6敗と分が悪かった東前頭2枚目の高安(24)を土俵際まで追い詰めながら、突き落としで敗れた。名古屋場所で痛めた左膝に痛みはなく、体の動きも上々で、2日目以降に気持ちを切り替えた。

 新大関の門出は、ほろ苦かった。豪栄道は立ち合いから鋭く当たり、高安を攻め立てた。もろ差しになり、全身に力を込めて前に出た。だが、その直後に悲鳴が響く。土俵際で突き落としを食らい、バタリと倒れた。物言いはついたが、相手の右かかとより自分の右肘が早く落ちた自覚があった。「先に落ちてましたよ」。敗れた現実を、愚痴も言わずに受け止めた。

 名古屋場所で左半月板を損傷し、一時は歩けないほどの痛みがあった。夏巡業を全休し、関取衆との稽古を再開したのは今月6日から。急仕上げは否めない状態だった。それだけに、負けはしたが先手先手と動き回り、相手の投げもこらえた相撲に、2日目以降の光明も見えた。「内容は悪くないので。全然相撲を取れるので」。痛みはないかと問われると「はい。大丈夫」と、はっきり答えた。

 新大関直後の試練は、乗り越えるためにある。7月30日の昇進伝達式では、はかまで隠した左足をテーピングで固めた体勢で「大和魂を貫いてまいります」と口上を述べた。「大関になった責任がある。優勝争いをしないといけない」。強い気持ちは、1つの黒星でなえるわけもない。

 この日は、車で直接地下駐車場に入れる大関以上の“特権”を使わず、これまで通り南門から歩いて入場。満員札止めのファンに顔見せした。国技館で発売された焼き肉入り豪栄道弁当も、一時的に売り切れた。多くの期待、注目を浴びる新大関。「反省するところは反省して。これからです」。自分に言い聞かすように、前を向いた。【木村有三】

 ◆新大関の初日成績

 年6場所制となった58年以降、過去56人の新大関の初日は41勝12敗3休。休場者を除いた勝率は、77・3%。直近で敗れた09年初場所の日馬富士は、初日から4連敗も、その後に巻き返し8勝7敗で勝ち越した。