<大相撲秋場所>◇4日目◇17日◇東京・両国国技館

 横綱日馬富士(30=伊勢ケ浜)が西前頭3枚目の嘉風(32)に、まげつかみの反則で負けた。夏場所の稀勢の里戦に続く2度目は、横綱として初。本人はつかんだことを認めたものの、勝負が決した場面ではなかっただけに、周囲は物議を醸した。全勝は白鵬、鶴竜の2横綱と、平幕の逸ノ城、旭天鵬の4人となった。

 日馬富士が嘉風を送り出したかに見えた。だが、西の土俵下に座る大鳴戸審判(元大関出島)から、まげをつかんだのではと物言いがついた。ビデオ室で映像が確認され、連絡を受けた審判団が協議し、横綱の反則負けが決まった。

 日馬富士は、相手の頭が当たって腫れた右目を押さえながら、無念の表情を浮かべた。「まあ、つかんでたな。目に当たって真っ白になった。よく(目が)見えなくて。勝負事だからしょうがない」。嘉風を攻めあぐね、引いたところで、左手がまげにかかった。これが相手の体勢を崩す一因になったと判断された。

 北の湖理事長(元横綱)は「左で張る癖があるから、まれに出る。(判断は)難しいなあ。つかんでバランスを崩したととったんでしょう」。白鵬も「流れの中。それで決まったわけではない。審判部はどういう判断をしたのか分からない」。決定打ではないだけに疑問を投げかけた。

 嘉風も「結構長い間引っ張られた感じがした」とする一方、「実際は引っ張られていなくても負けていた気がする」と半信半疑。反則での日馬富士戦5連勝に「複雑です。超気持ち悪い」を繰り返した。

 今年夏場所の鶴竜-豪栄道戦で、白鵬が物言いをつけ「まげつかみ」が注目された。以降、審判部では疑わしいものに関しては、ビデオで確認することが徹底された。井筒審判長(元関脇逆鉾)は私見としたうえで「まげつかみの場合は、取り直しの方があっさりするんじゃないのかなあ。また話し合うこともある」。検討の余地があることを示唆した。

 日馬富士は右目を氷で冷やしながら「大丈夫でしょ」と帰路についた。心身ともに痛い判定となった。【鎌田直秀】

 ◆まげつかみ

 公認相撲規則で審判規則の禁じ手反則第1条に定められた8つの禁じ手の1つに「頭髪を故意につかむこと」とされている。だが、細かくは明記されていなく、故意かどうかを含めて、判定は審判にゆだねられているのが現状。平幕が横綱に反則勝ちしても金星とは認められない。

 ◆最近のまげつかみ騒動

 今年の夏場所で横綱が連続して「まげ」に絡んだ。12日目に、新横綱鶴竜が豪栄道にはたかれて落ちた。軍配は豪栄道に上がるも、控えに座っていた白鵬が物言い。協議の結果、まげをつかんでいたとして、鶴竜が横綱として史上初の反則勝ちを収めた。2日後の14日目には、横綱日馬富士が稀勢の里のまげをつかみ、03年名古屋場所の朝青龍以来、横綱として史上2度目の反則負け。以後、審判部も、際どい一番は小まめに確認を行うこととした。