<大相撲秋場所>◇8日目◇21日◇東京・両国国技館

 初日から7連敗だった西前頭筆頭の遠藤(23=追手風)が、初白星を挙げた。東前頭2枚目の高安(24)の突き押しに耐え、右下手を引くと一気に前に出て押し出し。病気療養のために今場所途中休場の師匠、追手風親方(48=元前頭大翔山)に届ける1勝となった。白鵬、鶴竜の2横綱は無傷の8連勝を決めた。

 遠藤の表情が少しだけ緩んだ。高安を押し出すと、目を閉じながら息を吐いた。「長いようで早かった。やっぱりいいですね」。3度目の上位総当たりとなった場所で自己最悪の7連敗から、1歩前に進んだ。

 ようやくつかんだ1勝を「我慢した結果」と表現した。黒星が続いても自分を信じて、集中し続ける我慢。高安の顔への突き押しに耐え、右下手をつかむと放さず頭をつけて我慢した。

 今場所も「遠藤応援シート」が新設されるなど人気は随一。プレゼントの自筆メッセージ入りカードには「九月場所も精一杯がんばります!

 応援宜しくお願いします!」と書いた。だが各方面から要望が多く「いろいろありすぎて、どこに何を書いたかとか正直覚えられなくなっちゃってます」と、場所前には混乱気味だったほど。期待が大きいからこそ、稽古法などを問う外野の声も多い。盾になってくれたのが追手風親方。大卒後、腰を痛めた二の舞いを避けるため出稽古の時期を見計らうなど遠藤に我慢させた。

 4日目の17日、その師匠に臀部(でんぶ)の病気が判明。関係者によると、あと数日発見が遅ければ命に関わりかねなかったという。師匠は部屋3階の自宅で療養中。40度を超えていた熱も今は下がり、遠藤も報告が日課だ。前夜も「技術面どうこうより1日一番。気持ちで負けるなと言われました」。背中を押されて奮い立った。

 遠藤は、勝ち越し、新三役も諦めていない。「1日一番でやるだけです」。師匠の言葉を胸に刻んで、残り7日間でも勝利も報告する。【鎌田直秀】