大相撲秋巡業を帯状疱疹(ほうしん)のため休場している逸ノ城(21=湊)が25日、埼玉・川口市の湊部屋で稽古を再開。前日24日に退院したばかりだが、約1時間、体を動かした。幕下時代に着けていた黒まわしを締めて初心に戻った。今日26日は福岡に移動し、明日27日の九州場所(11月9日初日、福岡国際センター)番付発表日に初めてまげを結う予定とあって、ザンバラ髪での最後の稽古となった。

 静かな稽古場に、逸ノ城の発する音と荒い息だけが響いた。パーン、ドスン、ハア~。手で92センチある太ももを軽くたたき、31センチの大きな足を土俵に激しくたたきつける四股。瞬く間に呼吸も乱れてくる。秋巡業同行や九州場所準備で力士らは既に福岡入りし、部屋にはたった1人だけ。富山・高岡市巡業以来12日ぶりに大粒の汗をかいた。

 白まわしではなく、幕下で使用していた黒まわしを締めた。約1時間、休みなし。四股に続き、柔軟運動や筋トレ。そしてすり足、てっぽうを終えると「今日はこれくらいで」と神棚に手を合わせて終了。土俵をほうきではき、水まきもした。「久しぶりで気持ち良かったですけれど、息がハアハアいっちゃってダメッすね。黒まわしもなんかいいっす。プロになった時のことを思い出して、またイチから頑張るぞってなりました」。ニコッと笑った。

 14日に帯状疱疹を発症した。本人は巡業同行を希望したが、医師でもある、湊親方(元前頭湊富士)の真夫人の判断で16日に入院。この日の稽古後は背中にできた発疹が少し赤くなったが、九州場所に影響はなさそうだ。「イチくん、ちゃんと動けた?」と声をかけた真夫人も「患部に砂がかかると悪化する可能性もあった。こんな言い方はダメかもしれないけれど、いい休養になったのかな」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 逸ノ城はきょう福岡入りし、新関脇が有力な番付発表に備える。「やっとまげが結える。似合いますかね?」。ザンバラ髪をかきあげながらの稽古も見納めとなった。【鎌田直秀】