<大相撲九州場所>◇5日目◇13日◇福岡国際センター

 新関脇逸ノ城(21=湊)が小結豪風(35)をはたき込みで下し、3勝2敗と白星を先行させた。幕内土俵入りの際に乱暴な客から背中をたたかれるハプニングもあったが、相撲には影響なし。今日6日目は、先場所立ち合いの変化で初金星を挙げた横綱鶴竜戦。2場所連続撃破へ、真っ向勝負を宣言した。

 本番前のトラブルも、どこ吹く風だった。幕内土俵入りの際、逸ノ城は西の花道沿いにいた乱暴なファンから背中を思い切りたたかれた。目撃した力士も「背中に手形ができていた」と驚くハプニング。だが、支度部屋で準備を整えると、再び上がった土俵ではあっさり豪風をはたき込んだ。「前に出て勝ちたかったけど、決まって良かった」。サラリと振り返った。

 豪栄道に敗れた前夜は、後援者に誘われて食事に出掛けた。玄界灘に近い洋食屋で、今場所初めてビールを口にした。「だいぶ飲みました」。場所前には替え玉もせずラーメン1杯で引き揚げたほど落ちていた食欲も、酔いにつられてか全開に。カルボナーラに300グラムのステーキ、骨付きラム肉など次々に平らげた。

 気持ちを切り替え、この日の朝は場所中には珍しく30番以上も稽古をこなした。立ち合いで低く踏み込む動きを繰り返した。体重も測ると「198キロになってました」とうれしそうに笑った。場所前は200キロを超えていたが「場所中は痩せるんです」と、またニヤリ。気分良く場所入りし、しっかり結果を出した。

 新関脇で序盤戦を3勝2敗で終え、今日6日目は横綱鶴竜戦。先場所は変化で初金星を奪ったが、温厚な横綱の怒りを買った。帯状疱疹(ほうしん)で離脱前の秋巡業では、徹底的にかわいがられた。因縁の再戦を前に「真っすぐ行って。たくさん稽古つけてもらったんで、喜んで思い切り当たっていきます」と、正面からの攻めを宣言。新入幕から2場所連続横綱撃破なら史上初となる。【木村有三】

 ◆新入幕から2場所連続横綱撃破

 横綱が地位として明文化された1909年(明42)以降、誰もいない。新入幕場所で横綱に勝利したのは逸ノ城を含めて3人。41年夏場所2日目に横綱男女ノ川を破った双見山は、翌42年春場所は横綱と対戦機会がなかった。73年秋場所14日目に横綱琴桜を破った大錦は、翌九州場所初日に輪島、4日目に北の富士、5日目に琴桜と対戦もいずれも黒星だった。