<大相撲初場所>◇9日目◇19日◇東京・両国国技館

 横綱日馬富士(30=伊勢ケ浜)が、大関豪栄道(28)を押し出しで下して1敗を守った。13年九州以来7場所ぶりの優勝へ、前夜は滋養強壮が見込めるスッポンを炭焼きで12匹も平らげ、スタミナ対策も万全。勝負の後半戦へ、全勝の白鵬(29)との1差をただ1人キープした。

 低く、速く、鋭かった。日馬富士が持ち味の速攻で、かど番大関を退けた。頭からぶつかり、いったん下がるがひるまない。もう1度、あごを引いて前に出て、一気に豪栄道を押し出した。1敗を守り「自分の相撲の流れだった」と淡々とうなずいた。

 長い15日間の戦い。その過酷さを日馬富士は「勝負の世界で2週間は大変ですよ。2週間が人の我慢の限界ですよ。それを増やしたら病気になりますよ」としみじみ言う。昨年は初場所を左足首靱帯(じんたい)部分断裂で全休、秋場所も右目付近を骨折して途中休場と、けがに泣かされただけに、体のケアにも人一倍気を使う。大流行のインフルエンザ感染を防ぐため、今場所は手洗い、うがいを欠かさない。

 大好きな焼き肉屋などへの外出回数も減らしていたが、場所を折り返した前夜は街へと繰り出した。向かった先は、滋養強壮やストレス軽減が見込めるスッポンの料理店。「前足2本の付け根部分が、柔らかくておいしいんだ。炭焼きで食べた。他の部位と味が違う。最高だよ」。平らげたスッポンの数は、なんと12匹。「前足しか取れない部分だから」とニヤリ。もちろん鍋にもして、卵かけ雑炊で締めた。旺盛な食欲も体調の良さを物語っている。

 負けた豪栄道の話になると「自分も大関の時に苦しさがあった。大関になった人しか分からないから」と、かど番で苦境に立たされた相手を思いやった。そんな心の余裕も、強さにつながっている。

 13年九州場所以来の優勝へ、全勝の白鵬との1差をただ1人キープした。「こうやって土俵に上がれる喜びを感じながら、精いっぱい集中してます」。満員御礼が続く中、V争いの注目を早々と消すわけにはいかない。優勝に飢えた日馬富士が、最後まで土俵を盛り上げる。【木村有三】

 ◆スッポン

 日本など極東アジアなどの沼、池、河川に生息する爬虫(はちゅう)類に属するカメ。性質は荒く肉食性。日本では浜名湖などで養殖もされている。料理する場合、甲羅、爪、ぼうこう、胆のう以外は全て食べられ鍋料理、蒸し焼き、雑炊、吸い物など高級料理とされる。またスッポンの血や、それを日本酒やワインで割った食前酒、乾燥させた粉末など、滋養強壮剤や精力剤としても活用される。低タンパク、低脂肪の低カロリーで、高血圧予防などに良いとされる。