<大相撲初場所>◇千秋楽◇25日◇東京・両国国技館

 東十両11枚目の阿武咲(おうのしょう、18=阿武松)が、新十両場所の千秋楽で勝ち越しを決めた。同5枚目翔天狼(32)をはたき込み8勝目。13年初場所の初土俵から12場所連続の勝ち越しとなった。相撲のいろはを教えてくれた恩師も応援に駆けつける中、関取として壁にもぶつかった15日間の集大成。成長した姿を見せ、さらなる飛躍を誓った。

 気合がみなぎっていた。阿武咲は立ち合いで鋭く当たると、翔天狼の動きを見て、すかさずはたき込み。「何も考えていなかった。体が勝手に動きました。でも、よく見えていた」。負ければ2年前の入門以来、自身初の負け越しとなる一番も「緊張したけど、その中でもリラックスできた」と、自分の相撲を取りきった。

 中学時代に2度全国制覇を果たし、高校1年時には国体少年個人の部で優勝して角界入り。「相撲王国」青森から出てきたホープは、昭和以降10番目に若い18歳5カ月20日で新十両に昇進した。初めて経験する1場所15番の取組も「体は疲れを感じない。いつも通り」と苦にしない。負けん気の強さで猛者と戦う姿に、会場では日を追うごとにサインを求めるファンが増加した。だが精神面では、大きな重圧がのしかかっていたのも事実だ。

 幕下と比べ体の大きい十両では白星先行できず、苦戦した。「(幕下に)落ちちゃいけないというプレッシャーはあった」と、初めて背負う気持ちに揺れた。175センチ、149・5キロの立派な体格でも、心は18歳。師匠の阿武松親方(元関脇益荒雄)から「落ちたらまた上がればいい。思い切りやれ」と励まされ、吹っ切れた。

 この日は中学時代の恩師で中泊道場の小山内誠氏も観戦に駆けつけた。「自分は相撲一本。土台を作ってくれた人。やっと気持ちが抜ける」と、勝利を届け安堵(あんど)した。それでも「課題だらけの場所になりました。頭の中は相撲でいっぱい。明日から稽古します」。痛感したのはパワー不足。強さを身につけ、さらに上を目指す。【桑原亮】

 ◆阿武咲奎也(おうのしょう・ふみや)本名・打越(うてつ)奎也。1996年(平8)7月4日生まれ、青森県北津軽郡中泊町出身。同町の中里中時代に全国2連覇、三本木農高1年時に国体少年個人で優勝。同校を中退して角界入りし、13年初場所で初土俵を踏んだ。得意は突き、押し。175センチ、149・5キロ。