全勝優勝した初場所後の会見で審判部の勝負判定を批判した横綱白鵬(29=宮城野)は28日、騒動後に初めて東京・墨田区の宮城野部屋に姿を見せたが、無言を貫いた。師匠の宮城野親方(元前頭竹葉山)は前日27日に北の湖理事長(元横綱)と審判部長の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)に謝罪。その後、都内の横綱の自宅で約1時間、白鵬と話し合い、注意したことを明らかにした。

 白鵬は足早に、入り口に横付けされた迎えの車に乗り込んだ。問いかけにも足を止めず、顔を向けることもなかった。騒動後、初めて宮城野部屋で姿を見せたが、険しい表情を変えない。午後4時20分ごろ、無言を貫いたまま、離れた。

 関係者によると、前夜に部屋を訪れて、そのまま寝泊まりしたという。昼ごろに、部屋では内弟子の石浦の新十両会見が行われたが姿を見せず、午後3時前に1度、1階の風呂に下りてきたのが最初の姿。2度目の登場で車に乗り込んだ。

 その姿を現す前に、師匠は既に全面謝罪していた。前日27日の早朝、北の湖理事長に電話し、白鵬の反省の気持ちも伝えた。理事長が問題視したのは「肌の色」発言だった。「そんなことで(勝負決定が)決まったらおかしいだろ!」などと叱責(しっせき)された。理事長は「人がどう取るか、誤解を招くことは横綱として言ってはいけない。言動の責任は師匠に監督責任がある」と断罪した。

 伊勢ケ浜親方には電話と、その後に直接会って謝罪。発言以外にも、千秋楽で入場が遅れ、取組の最中に審判委員の隣の控えに座ったことも厳重注意された。この日の番付編成会議後、審判委員の親方衆は皆「あれは同体」と口をそろえた。伊勢ケ浜親方は「自分で自分の価値を下げる言動をしたのは本当に残念。(師匠に)かなり厳しく言わせてもらった。どれだけ大変なことをしたか、しっかり伝えてもらいたい。理解できない」と嘆いた。

 宮城野親方は謝罪後、その足で都内の横綱の自宅を訪れた。約1時間、膝を突き合わせて話し合い、そこで白鵬は静かにうなずいていた。事の重大さに気づき「すみませんでした」などと謝ったという。「言葉を知らない。日本語のあやが分からない。話したことが、重たい言葉だというのを分からないで言っていると思う。後ですごく反省していましたから」と話した。

 北の湖理事長は、29日の理事会や師匠会で議題には挙げないとした。審判部では一部から、白鵬にペナルティーを科す案や本人からの謝罪を促す意見も上がったが、宮城野親方の懸命な謝罪を理由に幕が引かれた。自らの“舌禍”で、師匠だけが全面謝罪に追い込まれた。横綱白鵬は今、何を思うのか。

 ◆白鵬の問題発言

 初場所千秋楽翌日の26日の一夜明け会見で「全勝優勝ですが」の質問に答えたのが発端。「疑惑の相撲が1つあるんですよね。これは、いかがなものかと」と切り出し「帰ってビデオを見た。子供が見ても分かる相撲」と取り直しに疑義。「もう少し緊張感を持ってやってもらいたい。ビデオ判定も元お相撲さんでしょう」と注文。さらに「肌の色は関係ないんですよ。この土俵に上がって、まげ結ってるのは日本の魂を持った、みんな同じ人間です。こっちは命を懸けてやってますからね」と続けた。これを受けて北の湖理事長(元横綱)は「難しい判定。簡単なものじゃない」とバッサリ。横綱審議委員会の内山委員長(当時)も「反省すべきは横綱本人」と厳しく断罪した。

 ◆白鵬の今後の予定

 2月1日に、自らが主催する少年相撲の「第5回白鵬杯」が東京・両国国技館で開かれ、白鵬も出席する。大会に出場する米国チームは今日29日、宮城野部屋で稽古する予定。白鵬が姿を見せるかは未定だ。2月2日には国技館内で健康診断があり、3日は千葉・成田山新勝寺などで豆まきに参加する予定。8日に大相撲トーナメント、11日にはNHK福祉大相撲も開かれる。