屈辱を味わい、男子背泳ぎの古賀淳也(24=第一三共)が過去の栄光と決別した。最終調整の北海道合宿。「2年前は2年前。後ろを経験して、もう後はないんで。どん底からはい上がった感じ。完全に挑戦者です」と吹っ切れた表情で話した。前回ローマ大会の金メダリスト。迷える心に自ら終止符を打ち、世界選手権に向けて完全に気持ちは切り替わった。

 今季は周囲の期待を裏切ってきた。4月の代表選考会の100メートルは入江に大きく水をあけられ、54秒39で世界選手権の派遣標準記録を破れず。続く5月のジャパンOPはさらに落ち込んだ。100メートル決勝でスタートから出遅れると、ズルズルと失速。優勝した入江から4秒05遅れでまさかの57秒16。最下位の8着という屈辱的な敗北を喫した。

 しかし、6月の欧州遠征で復調のきっかけをつかんだ。水泳に集中できる環境で、泳ぎ込んだ。ライバルの入江からは「頭がブレて体が崩れている」と指摘された。そして以前から取り組む古武道の動きを繰り返し、力まず無駄なく体が動くよう、全身の神経を研ぎ澄ませた。さまざまな取り組みで、持ち前の瞬発力がよみがえった。今は最後の仕上げとしてターンの回りを修正。100メートルで金メダルを争う入江、ラクール(フランス)との接戦を想定し、細かな部分に磨きをかける。

 実は2年前のジャパンOPの50メートルでも予選敗退し、そこから世界の頂点に立った。今回も結果的にスランプを味わったことで、初心に立ち返ることができた。「もう1回、前にいって引っ張るレースをしたい」。イメージ通りの泳ぎができれば、自然と結果は付いてくる。狙うはローマ大会の再現だ。目標タイムは52秒5に設定し「100メートルは多分いい結果が出る」。迷いが消え、本来の口ぶりまで戻った。【佐藤隆志】

 ◆古賀淳也(こが・じゅんや)1987年(昭62)7月19日、埼玉出身。春日部共栄-早大-第一三共。4歳で水泳を始め、小学4年から背泳ぎ中心。高校3年時の高校総体とジュニア・パンパシフィック選手権100メートルで優勝。09年世界選手権の同種目を52秒26のタイムで金メダル。10年アジア大会50メートル優勝、100メートルは2位。181センチ、74キロ。血液型B。