<水泳世界選手権:競泳>◇31日◇上海

 【上海(中国)=佐藤隆志】男子400メートル個人メドレーで、堀畑裕也(21=日体大)が4分11秒98の日本新記録で銅メダルをつかんだ。日本勢がこの種目で表彰台に立つのは五輪も含めて初めて。この結果、日本水連指定の「オリンピック候補」に格上げされ、来年のロンドン五輪へ専門的な強化支援を受けてメダル獲得を目指す。今大会の日本競泳陣のメダルは銀4、銅2の計6つだった。

 身長188センチの大柄なロクテの脇で、表彰台に上がった169センチの小兵が大きく見えた。少年時代からあこがれていた世界のひのき舞台で、堀畑の笑顔が輝いた。「今日は水に飛び込んだ瞬間から体が軽く、いけると思った」。自己記録を0秒04更新する会心の泳ぎだ。伸び盛りの21歳が有終の美を飾った。

 冷静にレースを運んだ。「危険を冒さず、3番を狙った」との言葉通り、本来なら前半(バタフライ、背泳ぎ)2分で入るところを2分2秒台。後半を見据えて余力を残した。平泳ぎでいったん中国の黄朝升に逆転されたが、落ち着いて付けて最後の自由形でまくった。会心の泳ぎに「チャンスをものにしたことがうれしい。それが僕の成長です」。予選で北京五輪2位のチェー(ハンガリー)が敗退した運も味方につけた。

 少年時代から体は小さかったが、実績は抜群だ。愛知・豊川高時代からジュニアの国際大会で活躍し、200メートルバタフライでは金メダルも取った。筋持久力の強さに加え、小回りを利かせた素早いターンが特長だ。「(小柄で)劣っているという意識はない」。6月には米アリゾナ州の標高2130メートルの高地で合宿。平井ヘッドコーチは「内に秘めるガッツがすごく努力家」。かつて北島もやったハードな追い込み練習にも音を上げなかった。

 前日30日が21歳の誕生日。ホテルの部屋に入ると健康食品「アミノバイタル」が並べられ、「祝21歳」の紙があった。入江からだった。その入江とはプールサイドで抱き合い、涙ぐんだ。藤森コーチからは「執念と意地を見せろ」とメールで檄(げき)を飛ばされた。さまざまな支えに「感謝の心」で応えての銅メダル。強化指定もこれまでの「オリンピック準候補」から「候補」に格上げされる。さまざまな支援を受ける分、期待も大きくなる。それでも「五輪のメダルはまだ…」。夢見心地の新星が、上海から飛び出した。<堀畑裕也メモ>

 ◆生まれ

 1990年(平2)7月30日、名古屋市生まれ。21歳。

 ◆経歴

 愛知・豊川高-日体大。現在3年生。

 ◆主な戦績

 08年世界ジュニア選手権200メートルバタフライ金メダル、09年世界選手権400メートル個人メドレー(個メ)9位。10年アジア大会400メートル個メ金メダル、200メートル個メ銅メダル。

 ◆自己記録

 200メートル個メは1分59秒25、400メートル個メは4分12秒02。

 ◆コーチ

 指導する日体大の藤森善弘氏は、00年シドニー五輪銀メダルの田島寧子を育てたコーチ。

 ◆サイズ

 身長169センチ、体重63キロ。男子代表唯一の160センチ台。豊川高時代は毎日2リットル牛乳を飲んだが、身長は「伸びなかった」。

 ◆血液型

 B。