<水泳世界選手権>◇最終日◇4日◇バルセロナ◇男子400メートル個人メドレー決勝

 ダイヤがプールで光り輝いた!!

 男子400メートル個人メドレーで瀬戸大也(19=JSS毛呂山)が4分8秒69で金メダルを獲得。自己ベスト(4分10秒10)を大きく更新し、この種目で日本人で初めて世界の頂点に立った。今季世界ランク1位の萩野公介(18=東洋大)にピタリとつけた瀬戸は、得意の平泳ぎを終えてトップに立つと最後の自由形で小3以来のライバルを振り切った。目標は3年後のリオデジャネイロ五輪の金メダル。ライバルで親友の萩野は5位に終わったが、その争いの舞台は世界になった。

 ラスト50メートル、瀬戸の体がグイグイと前に出た。萩野を振り切り、猛追してきた世界の強豪たちを抑えた。金メダル候補と言われた萩野の陰に隠れていたが、昨年の世界短水路選手権の同種目王者。「コースケばかりが活躍して、自分は活躍できずに悔しかった」。意地が加速につながった。

 得意のバタフライは萩野に先行された。100メートルは3位だった。苦手の背泳ぎで粘り、200メートルを萩野に続く2位で折り返した。得意の平泳ぎでトップに立った。ライバルも苦手を克服したと言われたが、ここで負けるわけにはいかなかった。最後の自由形。350メートルは萩野に抜かれた。ラスト50。再び抜き返した。

 「すごく幸せ。100%のレースだった」。最高の笑顔で振り返った。小学生の頃からいつも隣を泳いでいた。ジュニアオリンピック、全国中学大会…。家族ぐるみで付き合ってきた。萩野が体調を崩して不振に陥った11年はライバルを尻目にタイムを上げた。「ロンドン五輪には2人で出たい」と心に決めた。

 昨年4月の代表選考会。直前のインフルエンザで体調を崩した。200メートル、400メートルとも3位。派遣標準記録は切ったが、五輪は逃した。いつも一緒に泳いでいた萩野が代表入り。落ち込んだ。大好きな練習にも身が入らなかった。転機は五輪本番。萩野の銅メダルを見て「自分は何をやっているんだ」と思った。ライバルの頑張る姿が刺激になった。「一緒に戦ってきたコースケがメダル。自分もメダルが狙える。くさっている場合じゃない」。

 昨年9月の国体で萩野に勝ち、12月の短水路世界選手権で金メダル。萩野に続くメダル候補として今大会に臨んだ。萩野の陰に隠れながらも「勝てるチャンスはある」と考え、プラン通りのレースで勝利をもぎとった。「五輪を落ちた時に支えてくれた方たちを思って、泳いだ」と話した。

 5コースを泳いだ瀬戸と6コースの萩野。隣のコースを泳ぐのは10年前と変わらないが、その舞台は小学生大会から世界へと変わった。ライバルに勝っての最高の世界王者。しかし「これで満足はしていない」。目標は五輪の金メダル。世界選手権はその過程だ。

 複数レースでメダルをとる萩野のすごさは十分分かっている。だからこそ「今度は一緒に表彰台に上がりたい」と話した。大会前、瀬戸は萩野と200メートル平泳ぎ世界記録を持つ山口観弘と3人で食事をした。顔を合わせれば水泳の話をし、常に世界を意識してきた同い年。五輪で金ラッシュを目指す「ゴールデンエイジ」の1番手として、ダイヤが最高の輝きを放った。【田口潤】

 ◆瀬戸大也(せと・だいや)1994年(平6)5月24日、埼玉・入間郡生まれ。6歳の時にJSS毛呂山で水泳を始め、個人メドレー、平泳ぎ、バタフライなどで活躍。高校総体では3年連続で個人メドレー2冠を達成。埼玉栄高から今春早大へ進学。家族は両親と妹。174センチ、70キロ。