<バレーボール:全日本高校選手権:鹿児島商3-1雄物川>◇男子準決勝◇11日◇東京体育館

 雄物川(秋田)が昨年の全国高校総体3位の鹿児島商(鹿児島)に敗れた。初の決勝進出はならなかったが、最後まで激しい競り合いを演じるなど粘りをみせた。主将でエースの川村悠希(3年)らは抜けるが、身長201センチのルーキー鈴木祐貴(1年)ら1、2年生も強力。ベスト4進出は来年度に向けた大きな収穫になった。

 雄物川の応援席から悲鳴が上がった。第4セットも1点を争う大熱戦。最後は23-25で力尽きた。第3セットこそ一方的に奪われたが、川村、鈴木祐のスパイクに全員の粘り強いプレーで各セット食い下がった。3位の表彰式では会場内から大きな拍手が送られた。

 宇佐美義和監督(62)は「今大会はチャンス」と大会前に話していた。川村をはじめ3年生、2年生が猛練習を続けてきた。その上4月から宇佐美監督が「日本男子バレーの宝」という大型ルーキー鈴木祐が加わり、ぐんぐん成長してきた。今大会期待通りの働きをみせた。

 チームは昨年の高校総体で8強、国体で4強。着実に階段を上がった。ホップ、ステップに続くジャンプの今大会。今や東北を代表する伝統校にとって、指導歴21年目の宇佐美監督にとっても、これまで最高の全国4強を越えるチャンスだった。敗戦の瞬間、川村らは涙を流した。

 宇佐美監督は3年生1人1人と握手。「よくやった。中学時代全国で勝てなかったお前たちが、頑張ればここまでやれると証明した。この貴重な経験を今後の人生に生かしてほしい」。そして2年生たちには「その涙がうそでないことを来年度、証明してくれ。もっと上に行くぞ」と激励した。

 20年東京五輪の星ともいわれる鈴木祐は初の「春高バレー」の戦いを終えた。「最後まで集中力が持続せず、スパイクを決めきれなかった。今後は自分がエースの自覚を持って、もっともっと上に行く」と言い切った。川村は「3年生たちは最後まで一緒に戦えてよかった。自分たちが残せたものが少しはあると思う。1、2年生はそれを元に頑張ってほしい」と後輩に託した。雄物川の挑戦が、また続く。【北村宏平】