<卓球:世界選手権>◇5日目◇2日◇女子シングルス4回戦◇横浜アリーナ

 世界ランク99位の石川佳純(16=ミキハウスJSC)が日本女子シングルス40年ぶりのメダルに王手をかけた。同4回戦で同33位のユ・モンユ(シンガポール)と対戦。変幻自在のサーブを駆使し、過去3戦全敗だった相手を4-2で下した。女子シングルスの8強は03年大会の福原愛以来で、3日の準々決勝では同1位の張怡寧(中国)と対戦する。

 石川が波を巻き起こした。3-2で迎えたマッチポイント。高々と上げたトスから強烈なスピンをかけたサーブをユがミス。「自分がベスト8に入れるなんて、思ってなかった」。女子シングルスでは03年大会の福原以来。感激の面持ちで引き揚げると、興奮した観衆がウエーブを起こした。

 中国出身で19歳のユには過去3戦全敗。ラリーで歯が立たなかった。だが過去の対戦からサーブが進化。球種、コースを微妙に変え、相手を惑わせた。サーブで崩すとラリーに持ち込ませず速攻勝負。ミキハウスの大嶋監督は「(つないで)我慢したらダメ。勝負に行かないといけなかった。それも(ある意味)我慢だった」と意図を明かした。

 わずか3週間ほど前の国内戦では代表に入ってない選手に敗れた。だが今大会で想像以上のスピードで成長。福原以来の8強進出に女子代表前監督の近藤氏は「(8強は)フィギュアの真央ちゃんが4回転を跳ぶようなもの」と表現した。

 次戦は08年北京五輪金メダリストの張に挑む。世界最強女王との初遭遇は07年夏の中国オープン。当時中2の石川は、試合前は「3点ぐらいしか取れないかも…」と不安に駆られたが1ゲームを奪取。「予想以上に競ることができた」。その感動を糧に成長を続けた。

 卓球王国、中国に触れ、張との距離感を縮めてきた。中国人コーチからもらった本や「ニンテンドーDS」のソフトで中国語を勉強。今や中国メディアから「好きな食べ物は?」「プレッシャーは?」と聞かれても流ちょうに答えられる。今大会前の中国修業では10勝6敗と経験も積んだ。

 今、持つすべての力を張にぶつける。3位決定戦はなく準々決勝に勝てば、日本女子シングルスでは69年ミュンヘン大会の小和田敏子(金)と浜田美穂(銅)以来のメダル。「あこがれの選手と世界選手権で戦えるのは幸せ」。16歳の少女が心をときめかせながら、奇跡に挑む。【広重竜太郎】