石川佳純(16=ミキハウスJSC)が卓球界の盛り上げ役を担う。5日、世界選手権が閉幕。女子シングルスで今大会日本勢最高の8強入りを果たした石川が、自身モデルのラケットを低価格で製作、販売してほしいという異例のお願いをしていたことが分かった。競技普及の願いを込めてのことで、会場内で5000円台で販売された石川モデルのラケット20本は、この日までに完売となった。卓球熱を自ら高めて、12年ロンドン五輪を目指す。

 今大会で日本勢最高の成績を収めた16歳の少女からは、想像できない思いだった。石川が試合で実際に使用しているモデルのラケット「佳純ベーシック」。メーカーのニッタクが会場内に設置したブースには人だかりができ、期間中に用意していた20本がこの日までに完売した。2万円以上と高額なものもある中、5775円(税込み)と人気選手としてはお手ごろな価格に、石川の卓球に対する思いが込められていた。

 石川

 買ってくれるのは小さい子が多いので、安くしたかった。卓球をしている子も、これからする子も、いろんな人に使ってもらいたい。

 関係者によれば普段、大会中は定価販売ということもあり「売れるのは数本」というのが常識。ニッタクの富沢取締役営業本部長は「石川選手なら1万5000円でも売れると思う。でも本人の強い気持ちもくみ、その中でいいものを作りたい」という。

 石川は両親への感謝の思いが強い。小さいころから天才少女として期待され、週末は毎週のように遠征。1回の遠征で2、3万円かかることもあり石川家の家計は決して楽ではなかった。両親の苦労を知り、将来の卓球普及のことを思うからこそ、ラケットの値段に強いこだわりが生まれた。今大会後は新モデルをテストし、来春には第2弾を販売する予定。石川の技術、パワー向上に伴うラケット改良のため2、3000円程度、高くなる見込みだが、それでもトップ選手としてはお買い得だ。

 この日は女子シングルス決勝のテレビ中継のゲストに呼ばれた。6日も、TBS系でみのもんた司会の「朝ズバッ!」に出演する。人気、注目度が急上昇しても、地に足が着いている。この日、準々決勝で敗れた張怡寧の優勝を見て、思いを新たにした。「今回のベスト8を自信にしてもっと頑張っていきたい」。卓球人気を高め、それを追い風にロンドン五輪へ向かう。【広重竜太郎】