第331号 1面記事 炎の闘将前へ!!太進 熱き思いは明治の魂 伊藤主将(農4)が今まで見てきた背中は余りに大きかった。あえて多くを語らず、自身の超人的なプレーでチームを引っ張っていった歴代の主将達。 「でも俺にはそこまでの力はなかった。試合の流れを変えることはできない」。そんな自分にできることはいったいなんなのか。 等身大 「とにかくアツい!!」(藤井・政経2)。どんな時でも一番に声を張り上げていたのは伊藤だった。「プレーで引っ張れなくても、俺がみなを奮起させることはできる」(伊藤)。背中で見せることができないからこそ、部員を鼓舞し続けた。「お兄ちゃんが弟達を歩いていくように、みんなと同じ目線を持った主将」(ラグビーマガジン編集者・森本優子氏)。普段から下級生に話しかけ、練習中も「ダメなところを見つけると、すぐ呼んでアドバイスしてくれる」(嵯峨・政経1)。部の雰囲気は、確実に変わりつつあった。そしてシーズン入りした明治は、交流戦で関東学院を撃破したのを皮切りに快進撃を続ける。 しかし11月3日、対慶応戦で部に衝撃が走った。チームの敗北、そして大黒柱・伊藤の鼻骨骨折。不安感が、徐々に選手達の心に差し込み始めていた。 真骨頂 「何しとるんや!」。対帝京大戦前のミニ合宿。練習中の停滞した雰囲気を打破したのは、伊藤の激しい喝だった。「このままじゃ負けるぞ!?もっと自分らで盛り立てていかないとあかん!!」。誰よりも負けん気の強い男。だからこそ伊藤は黙っていられなかった。固い決心をその胸に秘めながら。 「出させてください」。対帝京大戦前、伊藤は境監督に申し出た。「俺が出てどうなるワケやない。けど俺はキャプテンなんや」。癒えぬケガ。痛くないといったらうそになる。だがどうしても見せたいものがあった。 前半31分、笠木(文3)からのパスが渡る。ディフェンスを力強く蹴散らしていく伊藤。「トライをとろうという気迫がスゴかった」(林・政経3)。そして、ゴールライン中央にボールが深く突き刺さった。 ウアーッ!!が然盛り上がる明大ベンチ。「太進が戻ってきてチームに一本筋が通った」(上田・政経4)。力強い後姿を見て誰もが思う。「スゴイ…けどキャプテンだけに頼っちゃいられない!!」(阿部・政経2)。声なきアツき魂の叫びが、遂に部員達に届いた。「主将をやることで自分自身も成長している」(森本氏)。逆境においても自らが突き進み、チームに道を示した伊藤。その大きな背中は"明治の主将"になっていた。 燃えろ 「ここまで来たら後は気持ちだけや!」。寒風舞う国立を、どこよりもアツい男が駆け抜ける。鋭い瞳に移るのは“勝利”の二文字のみ。赤黒を倒し、紫紺の魂をフィールドに刻み付けろ!![藤浦澄恵]