第338号 1面記事 宮崎メイジ インカレ全種目制覇 チームを愛した男が輝いた時 リンクに響き渡る明治の校歌。アイスホッケー部門の選手たちと輪を組みながら共に喜びを分かち合う。その中に、一人感極まり目頭を熱くする宮崎スピード部門主将(政経4)の姿があった。「こうやってみんなと喜べるのもこれで最後なんだ…」。主将で迎えた今シーズン、全てはこの日のために――。 雪辱を胸に 1年時から、2年連続で5000m.・1万m.の二冠に輝いていた宮崎。若きエースの活躍もあり、明治は連覇を3へと伸ばす。普段は孤独な戦いを続ける男にとって、皆で勝利を共有できるインカレは楽しかった。そして、学年が上がるにつれ強まっていくチームへの思い。しかし迎えた昨年、明治はまさかの敗北を喫してしまう。強過ぎるが故に一人ひとりに生まれていた、わずかな油断。力はあるのに…。宮崎は沸き上がる感情を抑えることができなかった。“同じ思いは二度と味わいたくない”。主将就任と相まって、生まれた大きな決意。「来年はただ勝つだけじゃ納得できない。完全優勝して、明治の強さを証明してみせる」。 主将の背中 実力もあって、どんな時もチームのことを思う主将。その背中は、部員たちにとってあまりに大きく魅力的だった。日本長距離界を代表する実績を持ちながらもチームへの気遣いを忘れない。大会となれば、仲間のレースを一人身を乗り出して応援していた。「今佐人(宮崎)さんは練習中でも一番話しかけてくれたし、チームのために必死だった」(下畑・政経2)。尊敬、そして信頼。チーム全員が、宮崎の背中を追って硬い絆で結ばれていく。“インカレは、絶対に全種目優勝したい!!”。そこには、思いを一つにした無敵のチームが生まれていた。 栄光の瞬間 部員たちの指揮も最高潮の中、迎えたインカレ。まず小原(政経2)が500m.で大会新記録を叩き出し優勝。仲間の活躍に、宮崎の気持ちは高ぶっていく。そして、四連覇の懸かった5000m.のスタート地点へと立った。「今シーズンで一番緊張した。コンディションも悪かったし」。その時点で、トップに立っていた平子(商3)のラップに、宮崎は必死で食らい付いていく。平子のタイムから遅れることは同時に得点圏から離れていくことを意味していた。足がちぎれても構わない。チームのために絶対離されるわけにはいかない!!ラスト1周、こん身の力でスパートをかけ、ゴールへ――。そこに待っていたものは、四連覇の栄光と愛する仲間の笑顔だった。「皆四連覇してほしいと思っていた」(大峠・営1)。主将自らが背中で見せた、勝利への執念。後押しされるように、選手達は最高の滑りをみせる。勢いそのままに、宮崎メイジは一気に全種目制覇へと駆け上がった。 ――待ち焦がれた、最高のフィナーレ。歓喜の輪の中で涙を見せる宮崎のその姿は、リンクの上で誰よりも輝いていた。【横川元紀】