捨てられないモノ 先日、私の家の近所の公園でフリーマーケットが開催されるという張り紙を見た。引越しの際にも頭を悩ませたたくさんの不要品が私の頭に浮かぶ。これを期に、たんすの肥やしとなっていると化している物とさよならしようと、私も生まれて初めてのフリーマーケットに店を出すことに決めた。 リサイクルできそうな物を部屋中から引っ張り出してみる。七五三の髪飾りに、小学校の給食で使っていた刺繍付きのテーブルクロス。まだこんな物もあったんだ、と思うような物ばかりが次から次へと出てくる。私は本来の目的を忘れて、その一つ一つを見ながら一人でニヤニヤしてしまった。 奥深い記憶の中から、時には鮮明に、時には断片的によみがえってくる思い出。その時々の出来事と一緒に、そこの風景や同じ時間を過ごした人たちの顔が重なった。テーブルクロスからは机や教室、同じ班の友達。テーブルクロスというものから、いもづる式に思い出がくっついてくる。「私はこんなにもたくさんの物や人に触れて今まで生きてきたんだな」。ふと温かい気持ちになって泣き出しそうだった。 気が付くと外はもうとっくに日が暮れていて、夕方というよりは夜に近い雰囲気だった。結局、フリーマーケットのための準備は全くといっていいほど進んでいなくて、ただ部屋を思い出の品々が汚しているだけだった。それでも私は、この日1日が、とても充実していたものだったと思う。今となっては実用性がゼロのものが、私にさまざまな事を教えてくれる。部屋を見渡しては、そんなことを思った。 フリーマーケットはというと、大盛況だった。ただ、私の部屋にはまだ不要品が残っている。やはり、懐かしさがこみ上げる物は処分できない。 裏ホイッスル バックナンバー